畑中 絹世¹, 鄭 浩柄¹, 工藤 正俊¹, 土師 誠二², 熊野 正士³, 岡田 真広³

Kinuyo HATANAKA¹, Hobyung CHUNG¹, Masatoshi KUDO¹, Seiji HAJI², Seiji KUMANO³, Mahiro OKADA³

¹近畿大学医学部　消化器内科, ²近畿大学医学部　外科, ³近畿大学医学部　放射線科

¹Department of Gastroenterology and Hepatology, Kinki University School of Medicine, ²Department of Surgery, Kinki University School of Medicine, ³Department of Radiology, Kinki University School of Medicine

キーワード :

【背景】
肝細胞癌の肉眼形態は悪性度と関連しており，治療方針決定の際に形態を把握することは重要である．Sonazoidを用いた造影超音波検査のpost-vascular phaseにおいて，古典的肝細胞癌はdefect像を呈する．このdefect像を詳細にscanすることで肝細胞癌の肉眼形態を評価することが可能と考えられる．
【目的】
肝細胞癌の肉眼形態の診断における，造影超音波検査の有用性を造影CT検査と比較し検討した．
【方法】
2007年2月〜2009年4月に外科的切除となった5cm以下の肝細胞癌症例のうち，術前に造影超音波検査にて評価可能であった28症例38結節を対象とした．全症例において術前に造影CT検査と造影超音波検査を施行し，造影CT検査は放射線科医師2名，造影超音波検査は消化器内科医師2名によって①単純結節型（simple nodular type, SN）②単純結節周囲増殖型（simple nodular type with extranodular growth type, SNEG）③多結節癒合型（confluent multinodular type, CMN）の3群に肉眼型を分類した．コンピューター断層撮影装置は東芝社製AqilionとGEメディカルシステム社製LightSpeed VCTを使用し，動脈相，門脈相，平衡相にて撮像した．造影剤は主にオムニパーク300（第一三共）とイオパミロン注300（バイエル薬品）を使用した．超音波診断装置はGEメディカルシステム社製Logiq7を用い，造影剤はSonazoid （第一三共）を0.01mL/kgにて静脈投与し，post-vascular phaseでDefect像の形態を観察した．
【結果】
症例は男性19人，女性9人で，平均年齢は67.0±7.6歳（52-80），平均腫瘍径は2.3±0.9cm（0.7-5.0）であった．切除標本における38結節中の肉眼分類は，小結節境界不明瞭型0結節，単純結節型26結節，単純結節周囲増殖型11結節，多結節癒合型1結節，浸潤型0結節であった．術前の造影超音波検査における肉眼分類診断率は86.8％（33/38）で，術前の造影CTにおける肉眼形態診断率は76.3％（29/38）であった．
【考察】
Sonazoid造影超音波検査では腫瘍と周囲肝実質の境界が明瞭に描出されため，腫瘍の形態をより正確に評価することが可能であった．近年，超音波検査を中心としたスクリーニングの普及により小型の肝細胞癌の発見頻度が増加している．造影超音波検査により，肉眼型をより正確に診断した上で治療方針を決定することが患者の予後向上に貢献 すると思われる．
【結語】
肝細胞癌の肉眼形態診断について造影超音波検査は造影CTより良好であった．