Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム5
心筋ストレイン・ストレインレートイメージングの現状と将来

(S148)

心室再同期療法の適応決定にストレインは役立つか?

Does Strain Imaging Improve Patient Selection for Cardiac Resynchronization Therapy?

宮崎 知奈美

Chinami MIYAZAKI

東住吉森本病院

Higashisumiyoshi Morimoto Hospital

キーワード :

 心室再同期療法(CRT)は幅広いQRSを伴う左室不全の治療として広く施行されている.しかし現在のQRS幅による適応では約30%がnon-responderとなることが知られている.Dyssynchronyの重症度でCRTの効果を予測する試みは当初はtissue velocityを用いることで高い感度,特異度でCRTの効果を予測することができると報告されてきた.そのようなtissue velocityに基づいたdyssynchornyの指標がCRTの効果予測に役立つという仮説は,多施設共同研究であるPROSPECT trialでは証明することができなかった.ネガティブな結果となった理由として,同スタディで問題となった計測のばらつきも大きな要素だが,tissue velocityは受動運動に左右されるため心筋収縮のタイミングを表現するのに限界があるということも考慮されなければならない.
 そのような限界を超えて心室壁の伸縮の状態を表すことができる方法として,スペックルトラッキングを用いたストレインイメージングが近年脚光を浴びている.スペックルトラッキングから求めたストレインを用いれば,CRTの効果をtissue velocity よりも良く予測できるというデータが報告されつつある.最初の報告は,左室短軸像においてRadial strainのtime to peak strain の最大の時間差がCRT後のreverse remodelingを予測できる,というPittsbug大学からの論文であった.一口にストレインといっても,心筋の収縮の伴って発生するストレインのうち,二次元心エコーで計測できるものにradial strain のみならずlongitudinal strain, circumferential strainが挙げられる.どの方向のストレインに基づいた指標が有用であるかは定かではなかった.近年,その中でもradial strain が最も予後予測に有用であるという報告がいくつかなされている.
 しかしtissue velocityにせよストレインの波形にせよ,dyssynchronyをtime to peakで測ろうとすれば複数のピークうちどれをピークと取るのが適切か,という問題に常に悩まされる.似た大きさのピークがある場合,どれが一番大きいかでピークを決めるというのは本質に迫れていないと思われる.これを打破するため近年time to peakに依存しないdyssynchrony指標が提唱されている.このような指標は,単に心筋の動きのピークがどれだけずれているかではなく,心筋内伝導の遅れがどれだけの無駄な心筋収縮を惹き起こしているかを定量している.またtime to peakではなくtime to first peakがより電気伝導の遅れに関与しているとう報告もある.
 本セッションでは,ストレインに基づいたさまざまなdyssynchrony指標がCRTの適応決定に役立つかをこれまでの報告に基づいてレビューし考察してみたいと思う.