Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム4
泌尿器癌の超音波診断ガイドラインを考える 第2部:前立腺

(S143)

前立腺癌診断におけるTRUSの有用性- PSA eraでの検討

Clinical significance of transrectal ultrasound of the prostate in diagnosing prostate cancer in the PSA era

小島 宗門1, 矢田 康文1, 早瀬 喜正2

Munekado KOJIMA1, Yasufumi YADA1, Yosimasa HAYASE2

1名古屋泌尿器科病院 泌尿器科, 2丸善クリニック 泌尿器科

1Urology, Nagoya Urology Hospital, 2Urology, Maruzen Clinic

キーワード :

【目的】
前立腺癌のスクリ-ニング法としては,直腸内指診(DRE)・経直腸的超音波断層法(TRUS)・前立腺特異抗原(PSA)の3つがgold standardsとされている.しかし最近では,PSAの普及に従いDREやTRUSの有用性に変化が生じている.そこで自験例を対象に,前立腺癌診断におけるTRUSの意義について検討したので報告する.
【方法】
対象は,1995年3月から2009年12月までの間に,当院で初回生検として前立腺系統的多数箇所生検(12-14箇所生検)を施行した1647例である.生検はTRUSガイド下に,経会陰的に行った.時期的な影響も併せて検討する目的で,生検時期により前期(1995-1999),中期(2000-2004)および後期(2005-2009)の3時期に分類した.
【成績】
生検対象1647例での各検査結果は,PSA異常が97%,DRE異常が26%そしてTRUS異常が33%の患者で認められ,PSAの異常がほぼ全例でみられた.TRUS異常の頻度は,前期36%,中期39%に対して後期では24%の低値であった.同様に,DRE異常の頻度は,前期29%,中期28%に対して後期では20%の低値であったまた,PSA値別での検討では,PSAが4未満,4-10,10-20,20ng/mL以上の群で,それぞれ81%,18%,32%,64%と,PSA異常例ではPSAが高値になるに従いTRUS異常頻度も高くなっていた.検査結果の組み合わせでは,PSA単独異常が1026例と過半数(62%)を占めていた.PSA+DRE異常が74例(4%),PSA+TRUS異常が188例(11%),PSA+DRE+TRUS異常が307例(19%)で,これら合計で1595例(97%)と大部分を占めており,PSA異常が大部分の症例で生検理由になっていた.前立腺系統的多数箇所生検により,593例の前立腺癌が診断され,全体での生検陽性率は36%であった.PSA値別では,4以下,4-10,10-20,20ng/ml以上が,それぞれ17%,26%,33%,68%であった.DREとTRUSの前立腺癌に対するsensitivityを比較すると,全体では45%と56%でTRUSが有意に高かった(p<0.0005).一方,specificityでは,DREがTRUSよりも有意に高値であった(85% vs 81%,p<0.005).以下の検討では,各PSA群別にTRUSの有用性を検討した.PSA正常例(n=52)での検討では,TRUSの単独異常例では前立腺癌は皆無であった.DREとTRUSの両者が異常の時,26%(8/31)の頻度で前立腺癌が検出されていた.DREとTRUSのsensitivityは,それぞれ100%と89%で有意差はなかった.同様にspecificityについても両者に違いはなかった(26% vs 21%).PSAが4-10ng/mLのいわゆるグレーゾーンの症例でのDREとTRUSのsensitivityは,それぞれ21%と30%で有意差(<0.05)はあるもののいずれも低値であった.Specificityについては,DREが有意に高値であった(91% vs 86%, p<0.01).PSAが10-20 ng/mLの場合には,sensitivityは,TRUSがDREよりも有意に高値であった(49% vs 34%,p<0.05)が,specificityには違いはなかった(82% vs 76%).PSAが20 ng/mL以上の場合には,sensitivityはTRUSとDREのいずれも高値であったが,TRUSがDREよりも有意に高値であった(86% vs 73%,p<0.001).しかし,specificityには違いはなかった(80% vs 80%).
【結論】
今回の検討では,PSA正常例におけるTRUS(およびDRE)の意義は明らかにされたが,PSAが4-20ng/mLの症例でのTRUSのsensitivityはいずれも50%以下に留まり,その意義の解明にはさらなる解析が必要と思われた.一方,PSAが20ng/mL以上の症例では,TRUSのsensitivityは86%と高値であるが,DREとの関係も含めなお一層の検討が必要である.本シンポジウムでは,さらにデータの解析を追加し,PSA eraにおけるTRUSの臨床的意義を明らかにしたい.