Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム3
泌尿器癌の超音波診断ガイドラインを考える 第1部:腎癌

(S141)

透析腎癌の検出における超音波診断の有用性

Usefullness of US examination technique in detecting renal cell carcinoma in chronic renal failure patients under hemodialysis.

尾上 篤志1, 秋山 隆弘2

Atsushi ONOUE1, Takahiro AKIYAMA2

1恒進會病院 腎臓病センター超音波室, 2堺温心会病院 泌尿器科

1General manager / Kidney Disease Center, Koushinkai Hospital, 2Honorary director / Ulology, Sakai Onshinkai Hospital

キーワード :

日本透析医学会の調査によると透析患者は2008年度で282622人とされ,これら透析患者における死亡原因のうち悪性腫瘍の割合は9.2%であり,脳血管障害とほぼ同じ比率で,心筋梗塞の2倍になる.特に腎癌は発生率が0.48〜4.2%と高率で,腫瘍径が大きくなるほど悪性度が増すことと,透析腎においてスクリーニングで発見された腎癌の方が,症状の出現により発見された腎癌よりも予後が良いという報告から,早期発見が重要性で,特に若年者の透析患者にとってアウトカムに大きく関わることは容易に想像できる.近年腎癌検出にスクリーニングが有用と考えられ,われわれが実施した大阪府下の透析施設でのアンケート調査の結果でも腎癌検出率はスクリーニングを実施している施設が1.07%で,実施していない施設の0.52%に比較し有意に検出率が高く,さらにスクリーニング回数は年1回と2回以上で腎癌検出率と検出された腎癌径には有意差を認めなかったことから年1回のスクリーニングを実施することが望ましいと考える.その際問題となるのは偶然発見される小さな腫瘤が多くなることと,透析腎癌はhypoechoicな腫瘤として描出されることが多く,腎実質が萎縮し,嚢胞形成なども伴う腎においては検出が困難となること,さらには腎実質の血流は非常に低下し,そこに発生した腫瘤の血流はカラードプラ法では検出困難な場合が多く,従来のBモードとドプラ法による腫瘤鑑別法では腎癌とComplex cystic renal massに代表される良性腫瘤との鑑別は困難になっている.腎癌の精査を考える上で,今だ造影CTがスタンダードであるが,透析患者にはX線のヨード系造影剤が使用禁忌であるため,その使用は限定される.それに対し,造影US法は透析患者への使用制限がなく,臓器内に還流する非常に遅い血流であっても造影効果が得られることからCTと比較しても,透析腎とそこに発生する腫瘤の血流も十分に評価可能な検査法である.実際アンケート調査で腎癌診断の検査法を比較すると,精査に用いられたのは造影CTが最も多かったのに対し,最終診断に有用であった検査法は造影USが最も多かった(図).以上,透析腎の検出・診断において超音波検査法は非常に有用な検査法であり,今後ガイドラインの作成を通してますます臨床応用されるものと期待してやまない.