Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム3
泌尿器癌の超音波診断ガイドラインを考える 第1部:腎癌

(S140)

腎細胞癌と他の腎腫瘤性病変の鑑別における超音波診断の有用性

Evaluation of Ultrasonography in the differential Diagnosis of Renal Masses

齊藤 弥穂, 丸上 永晃, 平井 都始子, 大石 元

Miho SAITO, Nagaaki MARUGAMI, Toshiko HIRAI, Hajime OHISHI

奈良県立医科大学 中央内視鏡・超音波部

Department of Enodscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

充実性腎細胞癌,嚢胞性腎細胞癌の現時点における超音波検査の診断能を,それぞれBモード像,カラードプラ法,造影超音波について文献,自験例をもとに報告する.①充実性腎細胞癌:腎充実性腫瘤の診断では腎細胞癌と腎血管筋脂肪腫( AML)の鑑別がもっとも重要である.一般的に,腎細胞癌の約7割を占める淡明細胞癌では被膜を有し,高頻度に腫瘍内出血や壊死を伴うことからBモード像でもこれを反映した周辺低エコーを呈する偽被膜や,内部に嚢胞壊死や高エコー部を伴う内部不均一な像が特徴といえる.また,サイズの小さな腎細胞癌は腎実質に対して,等または低エコーを示すケースが多いが,特に腫瘤が高エコーを示す場合は,AMLが鑑別に挙がる.AMLは,被膜が無く血管,平滑筋,脂肪の3成分が混在した良性腫瘍であるため,腫瘍内の脂肪成分が多い場合は高エコーを呈し,被膜がないため辺縁低エコー帯を伴わず,辺縁部は不整や不明瞭であることが鑑別診断における決め手となる.しかし,脂肪成分が少ない場合,また認めない場合が存在し,その場合はカラードプラ法やパワードプラ法を用いた鑑別に進む必要がある.また,腎細胞癌でもその組織型によっては,血流に乏しいものがあり脂肪成分や血管成分に乏しいAMLと鑑別に苦慮するケースがある.カラードプラ法・パワードプラ法では,充実性の腎細胞癌は血流に富み,腫瘍辺縁を囲み,内部に屈曲蛇行する強いカラー表示が認められる.また,3次元表示を併用して腎腫瘤内血管構築のパターンを観察すると,腎細胞癌の場合はバスケットパターンを呈する.これに対し,AMLでは明らかなカラー表示を認めないか,点状-線状カラー表示を認めることが多い.血管構築のパターン分類ではスポットパターンを呈する.②嚢胞性腎細胞癌:腎嚢胞性病変の診断は,通常は造影CT所見をもとに作成されたBosniakの分類に従い治療方針が決定されるため,Bモード像もこれをもとにして診断を進める.嚢胞壁の肥厚や嚢胞内に隔壁を有する場合,辺縁が不整である場合や嚢胞内に腫瘤や石灰化を認める場合にはカテゴリーⅢ以上となり,腎細胞癌の合併を念頭に置く必要がでてくる.カラードプラ法で充実部や隔壁に一致して豊富なカラー表示が得られた場合には嚢胞性腎細胞癌と診断する根拠となる.③造影超音波検査:本邦においては1999年からレボビストが,2007年からはソナゾイドが経静脈性超音波造影剤として認可されている.腎血流のレボビストによる造影能は高く,腎細胞癌における診断に有用な検査として評価されている.ソナゾイドについては現時点では肝腫瘍における診断・治療効果判定などに限定されており,腎臓における使用は臨床治験症例に限定されているが,海外ではソノビューを用いた報告例もみられる.文献的考察および自験例について,これら造影超音波の腎細胞癌の診断の可能性について述べる.