Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム3
泌尿器癌の超音波診断ガイドラインを考える 第1部:腎癌

(S140)

超音波検診における腎細胞癌の実態と超音波像

Current status and ultrasonographic features of renal cell carcinoma detected by US screening.

三原 修一, 大竹 宏治

Shuichi MIHARA, Kouji OTAKE

日本赤十字社熊本健康管理センター 内科

Internal medicine, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center

キーワード :

我々は,1983年8月から人間ドックおよび地域・職域集検において腹部超音波検診を行ってきた.今回,発見された腎細胞癌症例を分析し,その実態を紹介するとともに,腎癌の超音波像の特徴を分析した.
【方法】
我々は現在,施設内では装置9台,集団検診では専用の超音波検診車10台(装置11台)を用いて腹部超音波検診を行っている.スクリーニングは全て技師が行い,全員が超音波検査士の取得をノルマとしている(現在消化器34名,体表19名,泌尿器18名).画像記録はすべて独自のファイリングシステムで行っており,前回との比較読影も瞬時に可能である.装置1台あたりの処理人数は,1時間当たり10名程度が基本である.年間の受診者数は約8万人(1日当り400〜500人)である.
【成績】
1)2006年3月までの24年間の受診者数は延べ1,554,502人(実質364,214人)で,肝細胞癌366例,胆嚢癌157例,膵臓癌133例など1,523例(対延べ受診者発見率0.10%)の悪性疾患が発見された.そのうち腎泌尿器の悪性疾患は腎癌359例(0.02%),膀胱癌145例(0.009%),腎盂尿管癌19例,前立腺癌65例など594例(発見率0.04%,全悪性疾患の39.0%)を占めた.2)腎細胞癌の男女比は2.3:1(250:109)で,平均年齢は男性58.3歳,女性59.4歳であった.年齢階級別発見率は,男女とも30歳以降の年齢で加齢とともに上昇し,全ての年代で男性が高率であった.背景因子では,自覚症状ありは6.4%(23/359),尿潜血検査陽性例は13.4%(43/321)であった.3)高齢者の5例を除く354例(98.6%)が切除され,その最大径(n=308)は20mm以下が73例(23.7%),21-40mmが146例(47.4%),41-70mmが71例(23.1%),71mm以上が18例(5.8%)であった.病期(n=329)は1期が283例(86.0%),2期が15例(4.6%),3期が30例(9.1%),4期が1例(0.3%)で,ほとんどが1期であった.4)腎癌切除例の5年生存率は98.3%,10年生存率は97.1%で,極めて予後良好であった.
【腎癌の超音波像】
小さい腎癌の内部エコーは均一な症例が多く,腫瘤径の増大とともに不均一(モザイク状)になる.自験例では,小腎癌(径25mm以下)の56%が高エコー均一,16%が等〜低エコー均一,25%が不均一であった.腫瘤径の増大とともに,腫瘤内の変性(壊死,出血など)を反映して不均一な症例が多くなり,径51mm以上では97%が不均一であった.また,嚢胞タイプの腎癌は4%であった.そのほか,腎癌を疑わせる超音波所見として,①辺縁低エコー帯(marginal hypoechoic zone,頻度18%):高エコー腫瘤でよくみられる,②腫瘤内部の嚢胞像(cyst in tumor, cystic structure,頻度16%):よく観察すると,より高頻度に見られる.高エコー腫瘤でよくみられる.③腎表面からの突出(全症例の78%,25mm以下腫瘤の67%),などが特徴的と思われる.また,腎癌は血流豊富(hypervascular)な症例が多く,カラードプラでは著明な血流エコーを認めることも多い.精密検査で診断が得られない小腎癌に対しては,超音波にて6ヶ月毎の経過観察を行うと良い.腎癌は発育速度が遅く,増大の有無を見極めてから対処しても十分救命可能である.
【まとめ】
腎癌は超音波検診発見癌の中でも,最も早期発見例が多く予後良好な癌である.また,その超音波像の特徴をふまえておけば,比較的容易に発見できる癌である.