Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

シンポジウム
シンポジウム1
超音波を用いた胎児循環計測の現状と未来

(S132)

疾病胎児におけるTei index

The Tei index in sick fetuses

市塚 清健, 松岡 隆, 大槻 克文, 岡井 崇

Kiyotake ICHIZUKA, Ryu MATSUOKA, Katsufumi OTSUKI, Takashi OKAI

昭和大学 産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Showa University

キーワード :

【目的】
胎児の心機能を評価する指標として,CTAR,PLI,EF,%FS,TRの有無,などが現在よく用いられている.その中で,CTARは直接の心ポンプ機能を表すものではなく,また,PLIのも心負荷は反映するが,右房圧の間接的な指標で心臓のポンプ機能を直接表しているとは言えない.一方,EFと%FSは心臓のポンプ機能そのものを評価する指標ではある.しかし,解剖学的な構造上,左心室機能に向くが,右室ポンプ機能の評価には適していない.胎児期は右心系優位であるため右室のポンプ機能評価が重要であり,上記評価法のみでは充分とは言えない.それらと異なり,Tei indexは両心室に応用可能で,心収縮能と心拡張能の両者を反映し,心筋の総合的機能評価が可能な指標である.循環器領域では広く計測されおり,胎児における応用も検討されている.今回我々は,胎児心機能異常と関連の深いTTTS受血児,胎児水腫,子宮内胎児発育不全 (FGR) においてTei indexを計正常胎児と比較した.
【対象】
対象は当科で管理した①MDtwin37例74胎児,その内TTTS群7例,non-TTTS群30例(23-37週),②胎児水腫4例(26-36週),③FGR20例(25-36週)で,血流異常(臍帯動脈拡張期途絶または逆流,静脈管の心房収縮期途絶または逆流,TRの有無)の無い群16例と有る群4例である.コントロールは合併症のない正常単胎胎児40例(22週-37週)とした.
【方法】
対象胎児のTei indexを独立した2検者で計測した.超音波ドプラのサンプリングポイントを房室弁直下と心室流出血管直後に異なる心周期で置き,房室弁閉鎖時間と大動脈・肺動脈駆出時間を別々に計測・記録した.Tei indexは僧帽弁または三尖弁流入血流の終了から再開始までの時間をa,大動脈または肺動脈駆出血流時間をbとし,(a-b)/bで求めた.超音波ビームと血流のなす角度は30度以下とし,胎動・呼吸様運動がなく心拍数が安定していて変動がない時に計測した.サンプリングボリュームは2mm,sweep speedは100mm/sec ,wall filterを300Hzに設定した.超音波診断装置はアロカ社製SSD5000およびα7,10を,探触子は3.75MHZ-8MHzの広帯域コンベックス経腹プローブを用いた.
【結果】
Tei indexは,正常胎児でLV; 0.29 (0.10-0.56),RV; 0.31 (0.15-0.48)であった.① MD twin: non TTTS : LV; 0.255 (0.12-0.57),RV; 0.385 (0.14-0.54),TTTS recipient fetus LV; 0.685 (0.56-0.79),RV; 0.780 (0.61-0.85),TTTS donor fetus LV; 0.335 (0.24-0.46),RV; 0.350 (0.27-0.45)であり,他群に比べTTTS recipient fetusにおいて有意に高値を示した(p<0.01).②胎児水腫ではLV; 0.610 (0.56-0.66),RV; 0.590 (0.57-0.67)でコントロールに比し有意に高値を示した(p<0.01).③FGRでは血流異常無し群: LV; 0.225 (0.06-0.53),RV; 0.275 (0.08-0.65),血流異常有り群: LV; 0.35 (0.31-0.39),RV; 0.235 (0.10-0.37)であった.血流異常なし群と有り群でLV に有意差を認めた( p<0.01 ).検者間誤差の検討ではSpearman r,LV; r=0.96 RV; 0.98 ( p<0.01 )であった.
【結論】
Tei indexは胎児心機能異常と関連の深いTTTS受血児,胎児水腫において高値を示すことが明らかとなった.FGRではコントロールとの間に有意差はなかったが,血流異常の無い群と有る群のLV でに有意差を認めたことから,血流異常を認めるFGRでは左心の心機能が低下している可能性が示唆された.