蓬原 一茂¹, 関根 理¹, 青木 厚², 桜木 雅子¹, 尾本 きよか³, 小西 文雄¹

Kazushige FUTSUHARA¹, Osamu SEKINE¹, Atsushi AOKI², Masako SAKURAGI¹, Kiyoka OMOTO³, Fumio KONISHI¹

¹自治医科大学附属さいたま医療センター外科, ²自治医科大学附属さいたま医療センター内科, ³自治医科大学附属さいたま医療センター臨床検査部

¹surgery，Saitama medical center , Jichi medical university, ²Internal medicine，Saitama medical center , Jichi medical university, ³Laboratory Medicine，Saitama medical center , Jichi medical university

キーワード :

【背景】
乳癌術前化学療法は病理学的完全奏効（pCR）が得られた場合は予後の改善が期待でき，進行乳癌では多く施行されている．しかも術前化学療法が非常に有効な場合，乳房の温存率が向上する利点がある．化学療法後の腫瘍の範囲，状況を検知する検査方法に関しては様々な要素で検討されている．特に非常に有効な化学療法では腫瘍部の変化が大きく，病理学的な抗腫瘍効果と相関する画像検査との組み合わせは重要と考える．今回我々は超音波検査とFDG-PET-CT，MRIを併用し病理学的奏効との比較を行い，その有用性を検討した．
【対象】
臨床的に腋窩リンパ節転移が疑われ，遠隔転移がなく，術前化学療法が行われた原発性乳癌10例
【治療方法】
Doxorubicin：50mg/m²，Paclitaxel：150mg/m²を3週間毎に4サイクル投与後，Paclitaxel：80mg/m2を毎週12回投与（HER2過剰発現の場合はTrastuzumab：2mg/kgを併用）
【検査方法】
術前化学療法施行前後において超音波検査とFDG-PET-CT，MRIを行った．効果判定は原発巣のみとし，超音波検査では腫瘍の3方向を計測した縮小率，FDF-PET-CTはmaxSUV（standardized uptake value），MRIはTIC（time-intensity curve）で評価し，病理学的評価は乳癌取り扱い規約（第16版）に準じた．
【結果】
病理学的奏効はgrade1：3例，grade2a：2例，grade2b：2例，grade3：3例．超音波検査での縮小率は中央値92％（72-100％），maxSUVは化学療法前中央値5.05（0-18.9）が化学療法後すべて0となり，MRIのTICも化学療法後すべて悪性所見が消失した．
【考察】
超音波検査での縮小率が90％を超えるとgrade2以上，95％以上を超えた場合にはgrade3の病理学的奏効が得られた．強力な化学療法では抗腫瘍効果が高いため，FDG-PET-CTやMRIでは悪性の所見がほとんど検知できない状況となった．しかし，超音波検査は病理学的奏効が高い場合でも詳細な評価が可能であり有効な判定方法であることが示唆された．