Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
産婦人科:胎児

(S508)

出生前に疑われた尿膜管嚢胞の一例

A case of allantoic cyst

田口 彰則, 松本 幸代, 松本 泰弘, 町田 亮太, 清水 泰樹, 木戸 浩一郎, 梁 栄治

Akinori TAGUCHI, Sachiyo MATSUMOTO, Yasuhiro MATSUMOTO, Ryota MACHIDA, Yasuki SHIMIZU, Koichiro KIDO, Eizi RYO

帝京大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター

OB/GY,Teikyo University Hospital

キーワード :

【緒言】
臍帯に発生する嚢胞は真性嚢胞と偽性嚢胞とがあり,胎児の先天異常や染色体異常との関連が指摘されている.また,嚢胞の発生部位や大きさにより胎児に影響を及ぼすことがある.その中で,尿膜管嚢胞(allantoic cyst)は臍帯の真性嚢胞であり,尿膜管遺残症を伴い新生児期に外科的治療を必要とすることがある.今回我々は妊娠35週に発見された尿膜管嚢胞の一例を経験したため報告する.
【症例】
36歳,1経妊1経産,hMG-hCG-AIH妊娠後,前医にて妊婦健診を受診していた.妊娠初期から中期の妊婦健診では胎児および臍帯に異常を認めなかった.妊娠35週2日,定期健診時の超音波検査にて,臍帯の浮腫と胎児腹腔内静脈の軽度拡張を認めた.MRI撮影を施行したところ,臍帯に嚢胞性腫瘤と,それに連続するように胎児腹壁直下にも嚢胞を認めた.また胎児腹腔内の臍帯静脈の拡張所見あり,妊娠35週6日,周産期管理目的で当院に紹介受診となった.
Volson E8(GE横河メディカル社)にて,臍帯の胎児側の浮腫様拡張と直径30mmの臍帯内の嚢胞,胎児腹腔内静脈の拡張所見(直径9mm)を認めた.臍帯は2A1Vであり,その他の胎児異常所見は描出されなかった.超音波およびMRI所見から尿膜管嚢胞を疑った.嚢胞による臍帯圧迫や臍帯静脈瘤内の血栓による胎児への影響を考慮し,妊娠36週2日,入院管理とした.入院中に臍帯嚢胞の増大や胎児のwellbeingが低下することはなかったが,家族のterminationの希望強く,NICUと相談の上,妊娠36週6日に分娩誘発施行した.児は2502g,臍帯は児の臍から長さ20cmにかけて浮腫を認めた.臍帯および胎盤の病理に異常はないものの,その後,児に尿膜管遺残が認められ,日齢20日に瘻孔摘出術,臍形成術を施行した.
【考察】
臍帯に発生する腫瘍性病変は嚢胞性のものが大部分である.臍帯嚢胞は遺残組織由来のもの(尿膜管嚢胞 卵黄腸管嚢胞),羊膜封入体嚢胞,腫瘍性嚢胞,Whalton膠質の変性(偽性嚢胞)が挙げられ,偽性嚢胞の頻度が最も高い.尿膜管嚢胞は,偽性嚢胞に次いで頻度が高く,胎児の先天異常や染色体異常との関連は低いとされている.
臍帯嚢胞の鑑別を分娩前に行うことは困難であるが,今回のような腹腔内の嚢胞の存在や,膀胱との連続性などで尿膜管嚢胞を疑う事は可能であると考える.