Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝

(S498)

造影超音波検査が治療方針の決定上有用であった肝損傷の一例

A case of hepatic injury in which contrast-enhanced ultrasonography was useful in treatment

竹之内 陽子1, 畠 二郎2, 中武 恵子1, 山下 都1, 谷口 真由美1, 岩井 美喜1, 麓由 起子1, 小島 健次1

Yoko TAKENOUCHI1, Jiro HATA2, Keiko NAKATAKE1, Miyako YAMASHITA1, Mayumi TANIGUCHI1, Miki IWAI1, Yukiko FUMOTO1, Kenji KOJIMA1

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波)

1Clinical Laboratory,Kawasaki Medical School Hospital, 2Endoscopy and Ultrasound,Dept.of Clinical Pathology and Laboratory Medicine,Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
腹部の鈍的外傷において,肝臓は最も傷害を受けやすい実質臓器で,救急外来で肝損傷は遭遇する頻度の高い疾患である.近年になり血管内治療を含む保存的治療法を選択する機会が増えている.治療方針の決定において造影CTが広く用いられており,その有用性に異論はないが,造影超音波検査がその決定上有用であった肝損傷の一例を経験したので報告する.
【症例】
10代,女性.
【主訴】
腹痛.
【既往歴】
特記すべき異常はみられない.
【現病歴】
200X年3月下旬,軽四自動車を運転中電柱に衝突し,その直後より右上腹部痛が出現したため当院に救急搬送された.
【入院時現症】
意識清明,血圧98 / 60oHg,脈拍86 /分・整,体温36.8 ℃,身長168.0cm,体重50.2kg.右上腹部に圧痛を認めたが,筋性防御はみられなかった.眼瞼結膜に貧血なし,眼球結膜に黄染を認めなかった.
【血液生化学検査所見】
白血球数10270 /μl,AST 129 IU/L,ALT 122 IU/Lの上昇以外,異常値は認めなかった.
【体外式超音波検査所見】
肝S8に大きさ約6.5×3cm,境界不明瞭,内部エコー不均一な相対的高エコー域がみられ,病歴とも併せ血腫が疑われた.カラードプラでは内部の血流シグナルは検出されなかった.ソナゾイド静注下(0.015ml/s)造影超音波を施行したところ,高エコー域の境界は明瞭となり,内部は不染域として描出され明らかな腫瘍血管は描出されず,血腫である可能性が示唆された.さらに遅れた時相では血腫内に漏出する造影剤が観察され,活動性出血の存在が示唆された.なお,使用機種は東芝社製SSA‐700A,探触子は3.75MHzコンベックスプローブあるいは6〜7MHzリニアプローブを適宜使用した.
【腹部造影CT検査所見】
肝S8に低濃度域が見られ,内部には血管外漏出と思われる高濃度域を認めた.
【臨床経過】
直ちに選択的腹腔動脈造影が施行された.肝動脈A8に斑状の血管外漏出が描出され,ゼルフォーム細片にて経カテーテル的動脈塞栓術(以下TAE)を施行した.翌日の造影CTで止血が確認され,一週間後に施行した超音波でも新たな血腫,出血源は認めなかった.貧血の進行もなく経過良好にて退院となった.
【考察】
救急外来では初期診断に超音波検査が施行され,肝損傷に遭遇する機会は多い.損傷部位の程度や経過時間などによりBモードでは多彩な像を示し,損傷部位の範囲を決定するには造影超音波が有用であった.さらに,血腫内の低速の血管外漏出は通常のドプラ法による検出は困難であり,治療方針決定上造影超音波の意義は大きいと思われた.
また,本症例では造影CTでも血管外漏出は捉えられており,両者いずれの方法が鋭敏であるかは明らかにできなかったが,超音波は簡便で非侵襲的に救急外来で施行できる点においては造影CTよりも優れていると思われた.
【結語】
造影超音波検査が治療方針の決定上有用であった肝損傷の一例を報告した.