塩澤 一恵¹, 渡邉 学¹, 高山 竜司¹, 和久井 紀貴¹, 飯田 和成¹, 住野 泰清¹, 工藤 岳秀², 丸山 憲一², 谷川 佳世子³, 渋谷 和俊³

Kazue SHIOZAWA¹, Manabu WATANABE¹, Ryuuji TAKAYAMA¹, Noritaka WAKUI¹, Kazunari IIDA¹, Yasukiyo SUMINO¹, Kakehide KUDO², Kennichi MARUYAMA², Kayoko TANIKAWA³, Kazutoshi SHIBUYA³

¹東邦大学医療センター大森病院消化器内科, ²東邦大学医療センター大森病院臨床生理機能検査部, ³東邦大学医療センター大森病院病院病理部

¹Department of Hepatology ＆ Gastroenterology，Toho University Medical Center Omori Hospital, ²Department of Clinical Laboratory ，Toho University Medical Center Omori Hospital, ³Department of Surgical Pathology，Toho University Medical Center Omori Hospital

キーワード :

【はじめに】
これまでわれわれが行なってきた肝腫瘍におけるソナゾイド造影超音波（CEUS）を用いたTime Intensity Curve（TIC）とダイナミックCT（CECT）との比較検討において腫瘍の染影速度の違いは血流動態の相違を表すことがわかった．しかし，TICでは腫瘍全体の血流動態の評価にとどまり，腫瘍内部の微細な血流の相違を確認することは不可能であった．このような問題を解決するために，われわれは少数例ではあるがCEUSを用いた肝腫瘍に対するパラメトリックイメージの検討を行なった．その結果，パラメトリックイメージでは，腫瘍内部の微細な血流動態の相違を簡便に視覚的にとらえることが可能であることが示唆された（第20回関東甲信越地方会学術集会）．しかし，得られた色彩の相違と病理組織学的所見についてはまだ十分な検討がなされていない．
【目的】
今回，CEUSを用いた肝悪性腫瘍におけるパラメトリックイメージを病理組織学的所見と比較検討することにより，視覚的にとらえた色彩の相違が病理組織学的診断とどのような関連があるか検討した．
【対象と方法】
当院で外科的切除術が施行された肝悪性腫瘍6結節（肝細胞癌（HCC）2結節，大腸癌肝転移4結節（化学療法後を含む））を対象とした．装置は東芝社製AplioXG，3.75MHzコンベックスプローブを用いソナゾイド0.5mlを静脈内投与し，MI値0.2で血管相（0〜40秒）を動画で保存した．その後東芝メディカルシステムズの神山らが開発した画像解析ソフトCOMMUNEを用いてパラメトリックイメージ法で各腫瘍の解析を行なった．パラメトリックイメージの作成方法は，腫瘍内に造影剤が到達した時点を起点として赤色→水色→黄色→青色に設定し，色彩の変化を経時的に表現した．切除標本はできる限り超音波画像と同一断面で作成した．得られたパラメトリックイメージと病理組織学的所見を比較検討した．
【結果】
腫瘍内部において色彩が得られた部位はviable areaまたは血管であった．特にHCC症例では被膜部と中分化型成分を有する部位は赤色を示した．また，大腸癌肝転移症例において完全壊死部では色彩は得られなかった．
【結語】
肝悪性腫瘍におけるパラメトリックイメージ法は病理組織学的所見の相違を簡便に静止画1枚で視覚的にとらえることができた．今後，同法を用いたHCC内部の分化度診断や肝転移に対する化学療法後の治療効果判定の有用性についてさらに検討を重ねる必要があると考える．