Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝

(S497)

造影超音波検査がFNH(限局性結節性過形成)の診断に有用であった症例

A Case of Hepatic Focal Nodular Hyperplasia(FNH) obtained diagnosis by Sonazoid-Enhanced Ultrasound

水島 靖子1, 椛島 有美1, 笠 弘佳1, 山口 倫1, 内田 信治3, 東谷 孝徳4, 佐川 公矯4, 田中 正俊2

Yasuko MIZUSHIMA1, Yumi KABASHIMA1, Hiroyosi RYU1, Rin YAMAGUCHI1, Shinji UCHIDA3, Takanori HIGASHITANI4, Kimitaka SAGAWA4, Masatoshi TANAKA2

1久留米大学医療センター臨床検査室, 2同消化器科, 3同外科, 4久留米大学病院臨床検査部

1Clinical laboratory,Kurume Univercity medical center, 2Gastroenterology,Kurume Univercity medical center, 3Surgery,Kurume Univercity medical center, 4Clinical laboratory,Kurume Univercity Hospital

キーワード :

<はじめに>
FNHは限局性の血流異常に伴う肝実質障害による肝細胞再生を病因とする良性の肝腫瘤で,肝機能検査で異常を認めず,比較的若い女性に多いとされている.腫瘤の多くは肝被膜下に発生し,超音波像では比較的境界明瞭な腫瘤として描出され,最も特異的所見は,中心性瘢痕内の動脈が腫瘤辺縁に向かって放射状に分布する車軸様血流パターン(spoke-wheel pattern)である.今回,造影超音波検査がFNHの鑑別診断に非常に有用であった症例を経験したので報告する.
< 症例 >
高血圧,高脂血症で治療中の76歳女性.肝機能は正常で超音波検査は軽度脂肪肝であり,経過観察中であった.
2008年9月,超音波検査を施行したところ肝表面S2に15×14mmの低〜等エコーの腫瘤像を認めたので,精査目的ためにCTを施行した.腫瘍は造影CT後期動脈相で濃染され,門脈相でわずかにwash outを認めたため悪性腫瘍の可能性を否定できず,MRIでも悪性の可能性が示唆された.
そこで,ソナゾイド超音波検査を施行したところ,血管イメージングで腫瘤の中心から辺縁に強く濃染される超音波像が確認でき,クッパーイメージングでは門脈欠損を認めなかったので,血流豊富な良性腫瘍を考え,hyperplasticな細胞を伴う非定形型FNHや肝細胞腺腫などを疑った.明瞭な車軸様血流パターン像は同定できなかった.腫瘍生検では,過形成肝細胞の出現がみられた.
良性病変の可能性を十分に得られたのだが,腹腔鏡下での手術が可能であったので,同年,11月に腹腔鏡下肝外側区域切除を行った.
病理組織診断では,比較的目立つ脂肪化を伴い,門脈瘢痕中心とした異常血管を認め肝細胞は過形成変化を示していた.中心瘢痕を示すような典型的FNHではなく,非定形型FNHと診断され,造影超音波検査と同様な所見を得ることができた.
<まとめ>
造影超音波検査は,腫瘤内の血管構造および,リアルタイムに血流動態の経過を観察することで質的診断を推測できる.
今回,中心性瘢痕の不明瞭なFNHが,造影超音波検査で同定可能であった.このように,造影超音波検査は悪性病変のみならず,良性病変の鑑別診断にも有用である.