中村 俊一¹, 岡崎 真悟¹, 山田 泰司¹, 大野 竜一¹, 東 弘志¹, 宮下 憲暢²

Shunichi NAKAMURA¹, Shingo OKAZAKI¹, Yasuji YAMADA¹, Ryuichi OHNO¹, Hiroshi AZUMA¹, Kencyo MIYASHITA²

¹JA北海道厚生連網走厚生病院放射線技術部門, ²JA北海道厚生連網走厚生病院内科

¹Radiological Technology，Abashiri kosei General Hospital, ²Internal Medicine，Abashiri kosei General Hospital

キーワード :

【はじめに】
肝原発の肝血管筋脂肪腫（angiomyolipoma：以下，AML）は比較的稀とされてきたが，近年は画像診断の進歩につれ報告数が増加してきている．しかし，血管成分，平滑筋成分，脂肪成分の比率により異なった画像を呈し，肝細胞癌をはじめとする悪性腫瘍との診断に苦慮することがある．今回，ソナゾイド造影超音波が画像診断上，有用であった一例を経験したので報告する．
【使用機器と方法】
東芝社製Aplio XV，造影モードはphase subtraction法を用いた．MI値0.2〜0.3，フレームレート15/secに設定後，低音圧連続送信にて観察した．
【症例】
59歳女性，肝機能障害にて当科受診し，スクリーニング目的にて腹部超音波検査施行．
肝腫瘍を認め，精査目的にて入院となる．入院時血液検査所見はT-bilが軽度上昇以外は正常値であった．HBs抗原，HCV抗体ともに陰性であった．腫瘍マーカーの上昇も認められなかった．既往歴：大動脈弁置換手術後，家族歴：特記事項なし．
【CT所見】
単純CTでは肝S3に境界不明瞭なlow density areaを認め，内部はモザイク状を呈しfat densityを含有していた．動脈早期相にて全体がモザイク状に強く不均一に濃染され，動脈相後期，平衡相とwash outされた．脂肪変性をきたしたHCCかAMLの判別は困難であった．
【MRI所見】
腫瘍内部は不均一でT1強調像にて低信号，T2強調像にて高信号を呈した．Dynamic studyでは早期から濃染され後期相まで濃染が持続する像を呈した．
【CT−Angio所見】
A3を栄養血管とした著明な腫瘍濃染像を認めた．流出血管は肝静脈であった．
【US所見】
肝S3に43×30mmの類円形を呈する高エコー腫瘍を認めた．境界は一部不明瞭，内部のエコーレベルは不均一であり，一部に円形の低エコー領域を認めた．
カラードプラにて腫瘍内部と辺縁に豊富な血流信号を認め，FFT解析では拍動波であった．
また流出静脈と思われる血流信号も確認でき，FFT解析にて定常流の確認もされた．
【造影US所見】
血管相早期より腫瘍辺縁に流入する不規則な太い腫瘍血管と腫瘍内部に微細な腫瘍血管が描出され，腫瘍全体が均一に染影された．また血管相後期のMFI（micro flow imaging）にて腫瘍血管と流出静脈が明瞭に描出された．約10分後のKupffer相ではBモードにて認めた円形の低エコー領域に一致して欠損像を認めた．
【経過】
各種画像診断より肝AMLと診断し，経過観察とした．3ヶ月後，半年後の画像所見にても大きさ，形態に変化を認めず，現在も経過観察中である．
【考察とまとめ】
肝AMLは基本的には良性の腫瘍であるため，各種画像診断にて診断がつけば経過観察が可能なことが多い．しかし，画像診断上，多彩な所見を示すことが多く悪性腫瘍との鑑別が困難な場合には外科的に切除されることもある．今回，ソナゾイド造影超音波の血管相にて微細な腫瘍血管と早期に肝静脈に流出する像が得られ，肝AMLと診断しえた．またソナゾイド造影超音波はリアルタイムにて血流を観察することができ，腫瘍への流入，流出血管の連続性も観察できることからも非常に有用であった．