Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝

(S496)

アルコール性肝線維症に合併した多血性過形成結節の造影超音波像

A case of hepatic hyperplastic nodule with alcoholic liver fibrosis

荒井 邦明1, 山下 竜也1, 玉井 利克1, 上田 晃之1, 砂子阪 肇1, 柿木 嘉平太1, 金子 周一1, 林 泰寛2, 高村 博之2, 谷 卓2, 全 陽3

Kuniaki ARAI1, Tatsuya YAMASHITA1, Toshikatsu TAMAI1, Teruyuki UEDA1, Hajime SUNAGOZAKA1, Kaheita KAKINOKI1, Shuichi KANEKO1, Yasuhiro HAYASHI2, Hiroyuki TAKAMURA2, Taku TANI2, You ZEN3

1金沢大学附属病院消化器内科, 2金沢大学附属病院肝胆膵移植外科, 3金沢大学附属病院病理部

1Department of Gastroenterology,Kanazawa University Hospital, Ishikawa, Japan, 2Department of Hepatobiliary Pancreatic Surgery and Transplantation,Kanazawa University Hospital, Ishikawa, Japan, 3Department of Pathology,Kanazawa University Hospital, Ishikawa, Japan

キーワード :

「症例」 症例は47歳男性.一日日本酒4-5合の大酒家であった.2008年7月熱中症にて近医受診した際に肝障害を指摘され,腹部超音波検査にて肝腫瘍を指摘されたため,精査加療目的に当院紹介となった.
「血液検査所見」 HBs抗原,HCV抗体,抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体全て陰性であった.腫瘍マーカーはAFP, L3分画,PIVKA-IIともに基準値内であった.
「超音波所見」 肝S5に約3cmの腫瘤を認めた.腫瘍内部は周囲肝実質と比較し均一な低エコーを呈し,周辺の低エコー帯は認めなかった.Sonazoidを用いた造影超音波検査(Toshiba Aprio-XV, PS-CHI, MI 0.2, FR 15)では,vascular phaseにて早期より動脈血流の流入ならびに腫瘤全体に広がる染影像を認めた.染影像は持続し,Post vascular phaseでも周囲肝実質と同程度からやや強い染影効果を呈し,20分以降も持続した.中心瘢痕様の染影不染域は認めなかった.
「その他の画像所見」 CTでは単純で低吸収を呈し,dynamic studyでは早期相でモザイク状の濃染像,後期相で薄い被膜様構造を認めた.CT-APでは門脈血流欠損を呈し,CT-HA早期相で濃染され,後期相では不均等な周囲へのコロナ状濃染を呈した.MRIではT2WIで淡い高信号,in/out phaseでの有意な信号強度の増強低下を認めなかった.EOB用いたdynamic studyでは,早期相で濃染され,遅延相では周囲に被膜様構造を認めた.しかし肝細胞相では周囲肝より不均一な淡い低信号〜等信号を呈し,またSPIO-MRIでは結節内へのSPIOの取り込み能が残存していた.
「診断」 これらの画像所見を総合して肝良性腫瘍,なかでもアルコール性肝線維症に合併する多血性過形成結節を第一に疑ったが,肝細胞癌を完全に否定できないことから,肝部分切除を施行した.病理組織診断では,結節内の柵状配列は1〜2層で,一部大型の細胞が出現していたが,異型性は軽度で,肝細胞癌を積極的に示唆する所見ではなかった.結節内には異常筋性血管や細胆管が含まれていた.腫瘍は不完全な線維性被膜を有していたが,典型的なcentral scarは認めなかった.最終的にアルコール性肝線維症に伴う過形成結節と診断した.
「考察」 以前の当科のLevovistを用いた造影超音波検査の検討にて,アルコール性肝線維症に合併する多血性過形成結節6結節は,全てearly arterial phaseにて腫瘍全体に比較的均一に広がる染影像を認めたものの,post vascular phaseにて染影効果の持続を明瞭に認めたのは4結節にとどまり,多血性肝細胞癌との鑑別に苦慮する結節もみられた.Sonazoidでは連続的に,また撮影時間を延長して繰り返し観察することが可能であり,両者を鑑別する鍵と考えられるpost vascular phaseでの染影効果の持続,増強所見をLevovistより明瞭確実にとらえることが可能であった.
「結語」 症例を積み重ねて追加検討する必要があるが,Sonazoidを用いた造影超音波検査は,アルコール性肝線維症に合併した多血性過形成結節と肝細胞癌の鑑別に有用と考えられ,文献的考察を加え発表する.