Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝

(S496)

造影超音波所見でも肝細胞癌と転移性肝癌の鑑別が困難であった1症例

A case of metastatic liver tumor that was difficult to differentiate from hepatocellular carcinoma by contrast enhanced ultrasonography using Sonazoid

高柳 大輔, 小川 眞広, 後藤 伊織, 櫛田 智子, 石綿 宏敏, 森山 光彦

Daisuke TAKAYANAGI, Masahiro OGAWA, Iori GOTO, Tomoko KUSHIDA, Hirotoshi ISHIWATA, Mitsuhiko MORIYAMA

駿河台日本大学病院消化器肝臓内科

Gastroentrerology and Hepatology,Surugadai Nihon University Hospital

キーワード :

【はじめに】
Sonazoidの造影超音波検査が施行され約2年が経過した.これまでLevovistを用いた造影超音波検査の診断学をもとに,第二世代造影剤として造影剤を非破壊でも観察できるため細かな血流観察が期待され,小結節性病変の観察も行われるようになってきている.これまで肝細胞癌の造影超音波検査の特徴は,Early arterial phaseの腫瘍濃染像とpost vascular phaseの欠損像であり,転移性肝癌はリング状の濃染像と比較的早い欠損像と言われていた.Sonazoidによる造影では,転移性肝癌においてもリング状の造影効果を呈する直前の動脈相早期でしばしば腫瘍濃染が認められ,小結節性病変においてはリング状の濃染を認めない場合には診断が困難となることも予想される.今回我々は,造影超音波診断で肝細胞癌と転移性肝癌の鑑別が困難だった症例を経験したので報告する.
【症例】
73歳女性.C型慢性肝炎加療中に肝細胞癌を指摘され,ラジオ波熱凝固療法を施行した.その後の経過観察中,肝左葉に約15mmの低エコー結節を認めたため肝細胞癌の異所性再発を疑い造影超音波検査を施行した.
【結果】
使用装置:GE横河メディカルシステム社製LOGIQ7,使用探触子:9Lプローブ.撮影条件:Sonazoid0.5ml/bodyを急速静注で投与しB-modeのphase inversionのTissue harmonic imagingでおこなった.造影早期より腫瘍周辺から流入する淡い腫瘍濃染像とlate vascular phaseの欠損像を認めた.以上の所見より肝細胞癌の異所性再発と診断し精査加療目的で入院となった.しかし入院後の精査で膵癌が指摘され,化学療法後この結節は消失し,転移性の肝癌と診断された.
【考察】
1cm前後の肝細胞癌の場合,被膜を形成しない結節が多くearly arterial phaseで腫瘍濃染像を呈する時間が短く周囲と均一になる症例が多い.また肝細胞癌の肝内転移では悪性度が高い場合には比較的早く欠損像を呈することも良く経験する.本症例では,肝細胞癌の治療後であったこと,造影開始直後の動脈優位相において腫瘍濃染像を認め,その後に欠損像を呈する過程でいわゆる辺縁のリング状の濃染効果がなかったため,転移性肝癌の診断に至らなかったと考えられる.転移性肝癌のリング状の濃染効果は,腫瘍内圧が上昇した際に見られる所見であり,ごく早期の段階の小結節性病変では両者の鑑別は造影パターンのみでは診断できないと思われた.今後小結節性病変の造影超音波診断を構築していく上で示唆に富む症例と考えられたので報告した.