Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:肝

(S494)

興味深い造影超音波所見を呈した胆管細胞癌の1例

A case of cholangiocellular Cartinoma with an interesting finding of Contrast-Enhanced Ultrasonography

橋本 眞里子1, 田中 弘教1, 2, 東浦 晶子1, 柴田 陽子1, 吉本 直喜1, 山平 正浩1, 吉田 昌弘1, 藤元 治朗3, 飯島 尋子

Mariko HASHIMOTO1, Hironori TANAKA1, 2, Akiko HIGASHIURA1, Yoko SHIBATA1, Naoki YOSHIMOYTO1, Masahiro YAMAHIRA1, Masahiro YOSHIDA1, Jiro FUJIMOTO3, Hiroko IIJIMA

1兵庫医科大学超音波センター, 2兵庫医科大学内科・肝胆膵科, 3兵庫医科大学肝胆膵外科

1Depertment of Ultrasound Imageing Center,Hyogo College of Medicine,Hyogo,Japan, 2Depertment of Internal Medicine,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease,Hyogo College of Medicine,Hyogo,Japan, 3Depertment of Surgery,Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease,Hyogo College of Medicine,Hyogo,Japan

キーワード :

【はじめに】
 胆管細胞癌は原発性肝癌の約3.5%に過ぎず,造影超音波所見についての十分な検討は少ない.今回我々は興味深い造影超音波検査所見を呈した胆管細胞癌の1例を経験したので報告する.
【症例】
患者は30歳代の女性.平成18年11月に胆管細胞癌に対する拡大右葉切除術施行後,外来にて化学療法施行中であったが,翌年4月に追加切除施行となった.その後,残存外側区域に再発を認め,化学療法施行するもコントロールできず,入院となる.HBs抗原,HCV抗体ともに陰性で肝機能も正常であったが,CA19-9は905U/mlと高値を呈していた.
(画像所見)超音波検査では,再発部は肝S2に存在する46mmの辺縁低エコー帯を伴う高エコー不均一な結節として描出された.その他にもS3に12mm,S2に7mmの低エコー腫瘤を新たに認めた.造影CT検査ではS2,S3の腫瘍はいずれも動脈相で辺縁のみがhigh,平衡相はlowであった.Sonazoidによる造影超音波検査(CEUS)を施行したところ,S2の主結節は動脈相で辺縁がリング状に染影されたが,腫瘤の中心部分ではhypoであった.門脈優位相では腫瘍全体がhypoとなり,門脈血流は認めなかった.約20分後のKupffer相では完全defectを呈した.その他のS3(12mm),S2(7mm)の腫瘍もKupffer相で同様に完全defectを呈した.S2の主結節に対してはさらにMicro Flow Imaging (MFI)で詳細な血流動態を観察したところ,辺縁の豊富な腫瘍血管が描出されると共に,辺縁から内部に流入する比較的太く屈曲蛇行した1本の樹枝状腫瘍血管が認められた.
(病理所見)腫瘍の肉眼所見は105x95mmの腫瘤形成型であった.組織所見では中心部はCholangio cellular carcinoma類似のadenocartinomaであったが,辺縁部に索状増殖を示すHCC類似の細胞の増殖を認めた.Hep1,CD10,CEA等により免疫組織学的に検討を行ったが,肝細胞形質の出現はなく,Cholangiocarcinomaと診断した.
【考察】
 本症例はCTや造影超音波検査では,動脈相でリング状の濃染が認められ,転移性肝癌との鑑別を要した.MFIにより得られた辺縁から中心部に向かう広狭不整な樹枝状の腫瘍血管形態は特徴的であり,胆管細胞癌のMFI所見を今後検討する上で示唆に富む症例であると考えられた.超音波検査によりカラードプラにてFNH様の脈管形態を呈した胆管細胞癌の報告例も過去に見られるが,これらは同様の血行動態を捉えている可能性もある.今後,胆管細胞癌の造影超音波検査による鑑別を考える上で貴重な症例と考えられた.また今回のような特徴的なMFI所見は,その他の肝疾患でも認めることはまれであり,胆管細胞癌の診断に有用な所見となる可能性があると考えられた.
【結語】
 MFIによる微細血管構築は胆管細胞癌の鑑別に有用であった.