Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆膵・後腹膜・その他

(S493)

虚血性大腸炎にて入院中に偶然発見された後腹膜神経鞘腫の1例

A case of retroperitoneal Schwannoma

岡本 みゆき1, 濱本 哲郎2, 中村 希代志3, 角 賢一4, 安宅 正幸4

Miyuki OKAMOTO1, Tetsurou HAMAMOTO2, Kiyoshi NAKAMURA3, Kenichi SUMI4, Masayuki ATAKA4

1同愛会博愛病院生理検査室, 2同愛会博愛病院消化器内科, 3同愛会博愛病院放射線科, 4同愛会博愛病院外科

1Division of Abdominal Ultrasound, Douaikai Hakuai Hospital, 2Department of Gastroenterology, Douaikai Hakuai Hospital, 3Department of Radiology, Douaikai Hakuai Hospital, 4Department of Surgery, Douaikai Hakuai Hospital

キーワード :

<はじめに>神経鞘腫Schwannomaは末梢神経系のSchwann細胞から発生する腫瘍で,後腹膜腫瘍としての発生頻度はわずか5%である.今回我々は,虚血性大腸炎にて入院中に偶然発見された後腹膜神経鞘腫を経験したので超音波所見と他の画像所見を併せて報告する.
<症例>50代,男性.
<現病歴>2008.7月下旬,嘔気・嘔吐・下痢を伴う左下腹部痛にて当院救急外来を受診,急性腹症としてCTを施行し,虚血性大腸炎として入院となった.また,下行結腸の浮腫性壁肥厚と左後腹膜に3cm強の腫瘤を認めた.
<血液生化学検査>WBC 9300,貧血なし,その他血液検査特記すべきことなし.便培養,病原性菌検出なし.CDトキシン(−).
<既往歴>小児喘息,痔核,虫垂炎.
<腹部US所見>入院10日目のUS所見は下行結腸からS状結腸にかけて内腔の虚脱と腸管壁の低エコー化がみられた.左下腹部,下行結腸よりやや足方に腸管との連続性のない側方陰影を伴った35×35mmの充実性腫瘍を認めた.周囲組織との境界は明瞭であり,内部に嚢胞または壊死を思わせる無エコーな箇所を伴っていた.また充実部には所々石灰化を思わせる高エコースポットも認めた.パワードプラーにて腫瘍後方から内部に流入する拍動性の血流を認めたものの腫瘍全体に血流シグナルはあまり検出されなかった.
<他の画像所見>
CT: 骨盤内左側,腸腰筋の外側に造影効果の弱い3cm強の低吸収腫瘤を認めた.
MRI: 左後腹膜腸骨前面,腸腰筋外側にT1強調像でほぼ均一な低信号,T2強調像で不均一高信号を呈する嚢胞変性を伴った3cm強の腫瘤を認めた.
左IIAからのCTA: 早期相では腫瘤の造影効果は軽度で,嚢胞または壊死と思われる不染域を認めた.10分後でも造影効果は認められ,間質成分に富む腫瘍と考えられた.
血管造影: DSAでは有意な所見を認めなかった.
PET—CT: 軽度の集積はあるものの,著明な増加はみられず良性疾患が疑われた.症状はなかったが,3cmを超える腫瘍であり腹腔鏡下摘出術が施行された.
<手術所見>全体にしっかりした隔壁を認める35×35×30mmの白色弾性硬の腫瘍であった.腫瘍内部には嚢胞が認められた.
<病理組織>腫瘍はSchwann cellの性格を有するtumor cellで大部分は束状に増殖し,核の柵状配列が見られ(Antoni A type),一部では不規則に増殖していた(Antoni B type).また一部にはhemangioma様の血管の拡張も見られた.
<まとめ>CTでは腸骨筋との境界が明瞭に描出されなかったが,エコーでは腫瘍周囲との境界が明瞭に描出されており,また腫瘍内の嚢胞などの細かな内部構造や血管の描出も他の画像所見をよく反映していた.症状の有無に関わらずルーチンのエコー検査時にも腹部全体を観察することは有用であり,時間をとられてもすべきであると思われた.