Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆膵・後腹膜・その他

(S492)

後腹膜原発脂肪肉腫の1例

Retroperitoneal liposarcoma: a case report

石井 学1, 畠 二郎2, 眞部 紀明2, 今村 祐志1, 山下 都3, 竹之内 陽子3, 中武 恵子3, 谷口 真由美3, 岩井 美喜3, 小島 健次3

Manabu ISHII1, Jiro HATA2, Noriaki MANABE2, Hiroshi IMAMURA1, Miyako YAMASHITA3, Yoko TAKENOUTI3, Keiko NAKATAKE3, Mayumi TANIGUTI3, Miki IWAI3, Kenji KOJIMA3

1川崎医科大学内科学食道・胃腸科, 2川崎医科大学検査診断学, 3川崎医科大学附属病院中央検査部

1Division of Gastroenterology Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 2Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 33Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School

キーワード :

症例は73歳男性.1年前に左鼠径部腫脹を主訴に近医受診され,腹部CTにて左陰嚢腫瘤,腹部腫瘤を指摘され,精査治療をすすめられるも放置.その後左陰嚢が次第に増大してきたため近医受診し,当院に精査治療目的で入院となった.腹部超音波検査では,陰嚢内に腹腔内から連続する腫瘤を認め,基本的には肥厚した板状の構造を呈しており,概ね均一な高エコーを呈していたが,内部に類円形の低エコー域が混在していた.腸管その他の組織は圧排所見のみであった.ソナゾイド静注下Low MI imagingでは陰嚢内の低エコー結節内にslow fillingな血流を認めた.大部分が高エコーを呈しており,脂肪成分が多い腫瘤と考えられたが,内部に低エコー域が混在しており,脂肪肉腫を疑った.超音波機器は東芝SSA−770Aを,プローブは中心周波数3−7MHzを使用した.腹部CTでは,IMA分岐部の高さの腹腔内から左鼠径管を介して左陰嚢内にかけての腫瘤性病変を認めた.内部の大部分は脂肪濃度で,線状索状の構造物が混在していた.MRIではT1強調画像で高信号,T1強調脂肪抑制画像で低信号化する領域が広く認められ,脂肪組織を多く含む腫瘤と考えられた.FDG-PETでは陰嚢内の結節部に集積を認め,またその他の部分にもFDGが不均一に軽度集積していた.以上より脂肪肉腫を疑い,腹腔内腫瘤,陰嚢内腫瘤摘出術を施行した.後腹膜・腹腔内成分は19×16.5×8cm,陰嚢内成分は17×10.5×9cm大で総重量は2140gであった.割面は黄色であり脂肪成分を主体とするものの,陰嚢内成分は全体的に粘液腫様であり,部分的には硬い充実成分を認めた.病理組織上,後腹膜に発生した高分化型の脂肪肉腫が増殖し,悪性度の高い成分が陰嚢内に進展した病変(stageIII,pT2bN0M0)と考えられた.鼠径部腫瘤を契機に発見された後腹膜脂肪肉腫は,われわれの調べた限りでは自験例で本邦11例目と稀であり,血管造影検査を施行した報告例は多数認めるものの,超音波造影剤静注下で血流を評価した報告は今までになく,若干の文献的考察を加え報告する.