Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆膵・後腹膜・その他

(S492)

脾動脈瘤例の検討

Splenic artery aneurysm: clinical significance

斉藤 芳太郎1, 石田 秀明1, 小松田 智也1, 渡部 多佳子1, 八木澤 仁1, 石井 透1, 大野 秀雄1, 宮内 孝冶2, 大山 葉子3, 長沼 裕子4

Yoshitarou SAITOU1, Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Takako WATANABE1, Hitoshi YAGISAWA1, Toru ISHII1, Hideo OHNO1, Takaharu MIYAUCHI2, Youko OHYAMA3, Hiroko NAGANUMA4

1秋田赤十字病院消化器科, 2秋田赤十字病院 放射線科, 3秋田組合病院生理検査, 4市立横手病院内科

1Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Clinical Laboratory, Akita Kumiai Hospital, 4Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

脾動脈瘤は,腎動脈瘤に次いで発生頻度の高い内臓動脈瘤である.以前は高度の門脈圧亢進症を伴う,とされていたが,最近では,それを伴わない例の報告も増加してきた.今回我々は,過去10年に経験した脾動脈瘤25例について検討し若干の知見を得たので報告する.
『対象と方法』25例の脾動脈瘤に関し,その臨床所見と超音波所見を検討した.脾動脈瘤の診断は,超音波で脾動脈の全経路を観察した際(上腹部横走査+左肋間走査経脾的),1)(Bモード)脾動脈が限局性に拡張し,2)(ドプラ)内部(瘤内)を回転する拍動流を認めるもの,とした.超音波診断装置:東芝社製;Aplio XV, XG(中心周波数:3−4MHz).CTは18例,血管造影は11例に施行し他が,脾動脈瘤の診断に不一致はないことから,上記1)2)を満たすものを本症とした.造影超音波は9例に施行した(2例はLevovist,7例はSonazoid).造影方法は通常の肝のそれに準じた.5例に3D超音波を施行した.症例群の内訳は,男性11例,女性14例で,年齢は,39-90歳(平均:49.5歳)である.
『結果』1)臨床所見の検討:(A)25例の脾動脈瘤は全例孤立性で,位置的には,a)腹腔動脈から肝動脈—脾動脈,分岐後に存在するもの(14例:56%),b)左腎-脾中間部に存在するもの(2例:8%),c)脾門部に存在するもの(9例:36%)で,瘤径は10-72mm(平均:38mm)であった.(B)7例(28%)に慢性肝疾患を合併し,その内訳は,C型肝硬変4例,特発性門脈圧亢進症3例,であった.この群の動脈瘤は6例(86%)が脾門部に存在した.C)3例(12%)は膵炎に伴う仮性動脈瘤であった.この2例では脾門部に1例では左腎近傍に動脈瘤が存在した.D)15例(60%)では原因不明であった.E)症状は,下血が3例(12%),貧血に起因するふらつきが4例(16%)に認められた.F)血液生化学的には,高度の貧血が8例(32%)に,軽度肝機能障害が7例(28%)認められた.2)超音波所見の検討:A)壁の石灰化が5例(20%)に認められ,その4例は慢性肝疾患を合併していた.B)3例(12%,全例慢性肝疾患合併)に脾-腎短絡を同時に認めた.C)他の内臓動脈瘤の合併は認められなかった.D)脾動脈瘤内に血栓はなく,拍動流は全例で壁に沿うように回転し,その最高流速は28.5-56.5cm/sec (Resistive Index:0.65-0.91)であった.拍動流は全例わずかな乱れ成分を含んでいた.E)造影超音波は診断を確認する以上の意義はなかったが,造影早期に瘤中心に非染域が出現する特徴があった.F)3Dは動脈瘤前後の状態を容易に理解できる利点を有した.
『まとめと考察』今回の検討で示されたように,全体としては,高度の門脈圧亢進症の合併は28%と低値であった.しかし,門脈圧亢進症(+)と(-)群に大別すると,(+)群では86%と圧倒的に脾門部に動脈瘤が見られた.一方(−)群では腹腔動脈からの肝動脈との分岐部近傍に見られた(13/18:72%).ここから,膵炎に伴う仮性動脈瘤例(脾門部に多い(2/3:67%))を除くと,原因不明例は80%が腹腔動脈からの肝動脈との分岐部近傍に見られたことになる.このように動脈瘤の存在部位により臨床的意味付けが異なることを念頭に入れ超音波検査を進めるべきである.