Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:胆膵・後腹膜・その他

(S491)

門脈血栓をきたした胆嚢炎

Cholecystitis-associated portal thrombus

大野 秀雄1, 石田 秀明1, 小松田 智也1, 石井 透1, 宮内 孝治2, 斎藤 謙5, 佐藤 勤3, 小棚 木均3, 大山 葉子4, 長沼 裕子6

Hideo OHNO1, Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Tohru ISHII1, Kouji MIYAUCHI2, Ken SAITOH5, Tsutomu SATOH3, Hitoshi KOTANAGI3, Youko OHYAMA4, Hiroko NAGANUMA6

1秋田赤十字病院 消化器科, 2秋田赤十字病院放射線科, 3秋田赤十字病院外科, 4秋田組合総合病院 臨床検査, 5秋田赤十字病院病理部, 6市立横手病院内科

1Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Radiology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Surgery,Akita Red Cross Hospital, 4Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 5Department of Pathology, Akita Red Cross Hospital, 6Department of Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

急性胆のう炎(慢性胆のう炎の上に急性増悪を伴うものも含め)は日常頻繁に遭遇する疾患であるが,門脈血栓を伴うことはまれとされている.今回我々はそのような2例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
超音波診断装置:東芝社製:Aplio XG(中心周波数:3−4MHz)
造影超音波:Sonazoidを用い肝の造影と同様の手順で行った.
症例1:50歳台男性.以前から胆嚢結石を指摘されていたが無症状であった.突然の右上腹部痛を主訴に来院.血液生化学的には,軽度の肝機能異常と炎症所見をみとめた.超音波上,腫大した胆嚢と頚部に4cm大のコレステロール結石とdebrisをみとめた.胆嚢壁は3mmとわずかに肥厚し胆嚢部にMurphy signを認めた.腹部に他の異常はなく,肝内や総胆管に結石はなかった.抗生剤を中心とした保存療法するも,翌日から高熱持続し疼痛も持続.2日後の超音波再検では,胆嚢や肝の状態は不変であったが,門脈右枝に均一(ほぼ肝と等エコーの)エコー域出現.造影超音波のどの時相でも無染で血栓と診断した.この時点では胆嚢壁は均一に造影されたが,炎症の進展による血栓形成と考え外科手術を考慮.5日後の胆嚢摘出術施行.胆汁は膿汁であった.頚部に結石がかん頓し,胆管を圧迫していた.組織学的に胆嚢壁内に壊死部が散在するも穿孔なく,悪性所見もなかった.術後経過順調で現在外来経過観察中.
症例2:50歳台男性:精神遅滞あり.腹痛と発熱を主訴に来院.血液生化学的には,軽度の肝機能異常と炎症所見をみとめた.超音波上,腫大した胆嚢と内部に多数の結石とdebrisをみとめた.胆嚢壁は7mmと肥厚し胆嚢部にMurphy signを認めた.肝内や総胆管に結石はなかったが,門脈臍部に均一(ほぼ肝と等エコーの)エコー域出現.造影超音波のどの時相でも無染で血栓と診断した.奨励同様,炎症の進展による血栓形成と考え外科手術を勧めるも同意せず経過観察中.
まとめと考察:急性胆のう炎に門脈血栓を合併した例の報告は比較的まれで,文献的にも,症例報告の形で散見されるにとどまっている.いずれも高度の炎症例であることから,血栓形成は胆のう炎の重篤化の所見と思われ,胆のう炎例を診療する際門脈にも注目すべきと思われる.血栓と腫瘍栓との鑑別には造影超音波が有用でどの時相でも,その部に造影剤の染まりが無い,ことで診断に苦慮することは無いと思われる.