本郷 麻衣子¹, 長沼 裕子¹, 船岡 正人¹, 奥山 厚¹, 武内 郷子¹, 渡部 昇¹, 吉岡 浩², 石田 秀明³, 渡部 多佳子⁴, 大山 葉子⁵

Maiko HONGO¹, Hiroko NAGANUMA¹, Masato FUNAOKA¹, Atushi OKUYAMA¹, Satoko TAKEUCHI¹, Noboru WATANABE¹, Hiroshi YOSHIOKA², Hideaki ISHIDA³, Takako WATANABE⁴, Youko OHYAMA⁵

¹市立横手病院内科, ²市立横手病院外科, ³秋田赤十字病院消化器科, ⁴秋田赤十字病院検査科, ⁵秋田組合総合病院検査科

¹Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, ²Surgery, Yokote Municipal Hospital, ³Gastroenterology，Akita Red Cross Hospital, ⁴Clinical Laboratory, Akita Red Cross Hospital, ⁵Clinical Laboratpry, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

〔はじめに〕胆嚢捻転症は胆嚢が頸部や胆嚢管で捻転することで血行が遮断され虚血性変化や壊疽性変化を生ずる．胆嚢や胆嚢管が間膜のみで肝と付着し胆嚢が可動性に富む遊走胆嚢を先天的因子とし，それに内臓下垂，老人性亀背，脊椎側彎，腹圧の急変，腸管蠕動などが誘引となり発症するとされている．我々は造影USで血行動態を詳細に観察した1例を中心に，術前診断した胆嚢捻転の3例を報告する．
〔症例1〕84歳女性．3日前より右側腹部痛あり．USで胆嚢腫大し，骨盤部まで下垂していた．胆嚢壁の著明な肥厚を認め，頚部で特に肥厚が強く認められた．総胆管が3管合流部で強く牽引され「く」の字に曲がっていた．カラードプラ（CD）では肥厚した胆嚢壁に血流認めず．造影USでも壁に染影は認めなかった．腹腔鏡下胆嚢摘出術施行．胆嚢はGrossI型遊走胆嚢で胆嚢管部において360度反時計回転していた．術後良好で退院．
〔症例2〕10歳男性．昼食後より心窩部痛出現．USで胆嚢腫大，壁肥厚，正中への偏位を認めた．CDでは肥厚した壁に血流を認めず．腹腔鏡下胆嚢摘出術施行，GrossII型遊走胆嚢．胆嚢管部で360度時計回転していた．術後良好で退院．
〔症例3〕82歳女性．上腹部痛，発熱が続き来院．USで胆嚢腫大，壁の著明な肥厚，胆嚢の左方への偏位を認めた．CDでは壁に血流を認めず．腹腔鏡下胆嚢摘出術施行，GrossI型遊走胆嚢．胆嚢管部で360度時計回転していた．術後良好で退院．
〔使用装置〕日立EUB8500，東芝AplioXG．〔造影剤〕ソナゾイド
〔まとめ〕胆嚢捻転のUS像では，①胆嚢腫大，②著明な壁肥厚，③胆嚢内デブリなど非特異的な所見の他に，④胆嚢と肝との接触面積の減少，⑤胆嚢の正中側または下方への偏位，⑥胆嚢壁の連続性の消失や頚部の異常陰影など，捻転を示唆する所見を得ることが重要で，さらに⑦胆嚢壁の血流の消失または低下など，血流情報が加えられることにより術前診断が確実なものになる．造影エコーは感度や分解能に優れており，詳細な血流評価が可能である．我々の経験した症例では造影エコーで著明な壁肥厚部には染影はなく，捻転による血行途絶が示唆され，速やかな治療方針の決定に寄与した．
〔参考文献〕
　1.Naganuma H, Ishida H, Komatsuda T, et al: Color Doppler diagnosis of gallbladder torsion. J Med Ultrasonics 1998; 25: 103-106.
　2.Gross RE: Congenital anomalies of the gallbladder; a review of one hundred and forty eight cases, with report of a double gallbladder. Arch Surg 1936; 32: 131-162.
　3.Safadi RR, Abu-yousef MM, Farah AS, et al. preoperative sonographic diagnosis of gallbladder torsion: report of two cases. J Ultrasound Med. 1993; 11:296-298.