Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化管

(S488)

Sonazoid造影超音波検査が診断に有用であった小腸悪性リンパ腫の1例

A case of malignant lymphoma of the small intestine in which Sonazoid-enhanced ultrasonography was useful in diagnosis

宇野 亜紀子1, 宮田 佳穂里1, 中尾 隆太郎1, 那須 鉄史1, 河島 明1, 近藤 渓1, 中尾 大成2, 南條 輝志男2, 玉井 秀幸3

Akiko UNO1, Kaori MIYATA1, Ryutarou NAKAO1, Tetushi NASU1, Akira KAWASHIMA1, Michi KONDOU1, Taisei NAKAO2, Kishio NANJOU2, Hideyuki TAMAI3

1公立那賀病院内科, 2和歌山県立医科大学第一内科, 3和歌山県立医科大学第二内科

1Internal Medicine, Naga Municipal Hospital, 2Internal Medicine 1, Wakayama Medical University, 3Internal Medicine 2, Wakayama Medical University

キーワード :

【はじめに】
小腸悪性腫瘍は消化管悪性腫瘍の中で約1〜2%と稀な疾患である.今回我々は腹部症状がなく,貧血,便潜血陽性を契機に発見された回腸原発悪性リンパ腫を経験した.上下部内視鏡検査で異常のない鉄欠乏性貧血の原因検索に,現在カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡が第一選択とされる.しかし本例では腹部超音波検査およびSonazoid造影超音波が最も診断に有用であったので報告する.
【症例】
79歳,男性.貧血,便潜血陽性にて当科紹介.上下部消化管内視鏡検査施行.下行結腸に15mm,胃に12mmのポリープを認め,いずれも内視鏡的切除術を行った.しかし切除後も貧血は進行.カプセル内視鏡検査を考慮したが,スクリーニング目的にて造影CTを施行した.右下中腹部に腫瘤性病変が疑われたが不明瞭であり質的診断は困難であった.腹部超音波検査を施行.同部に35mmのpsuedkidney signを呈する不整な低エコー腫瘍が認められた.腸管壁が全周性に厚く肥厚した病変であり層構造は消失し均一で強い低エコーを呈した.また腫瘍周囲に10mmの類円形低エコー腫瘤が数個認められた.カラードプラでは腫瘍内に拍動性の血流シグナルが検出され血管構築が観察できた.腫瘍周囲の低エコー腫瘤内にも血流シグナルが検出された.Sonazoid造影超音波では,腫瘍に流入する豊富な血流が観察され,強く均一に濃染された.腫瘍周囲の類円形腫瘤も濃染され転移リンパ節と診断した.以上より小腸悪性腫瘍と診断し,悪性リンパ腫が疑われた.小腸二重造影では,回盲部より約50cmに全周性の不整な狭窄を認めたが,内腔は比較的保たれていた.ダブルバルーン内視鏡を施行するも病変部に到達できなかった.回腸部分切除術およびリンパ節郭清術を施行.Non-Hodgikin lymphoma, diffuse large B-cell type と診断された.
【結語】
カプセル内視鏡検査は,狭窄性病変の存在が疑われる場合は禁忌である.狭窄性病変のスクリーニング検査として超音波検査は有用であり,本例では狭窄性病変の存在診断だけでなく,カラードプラやSonazoid造影超音波により,悪性腫瘍の質的診断も可能であった.原因不明の消化管出血にカプセル内視鏡を行う前には超音波検査を施行すべきであり,病変が発見されれば引き続き造影検査も行うべきであると考えられた.