Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化管

(S486)

超音波が壁の層構造と由来臓器の同定に有用であった多発性胃重複症の1例

Ultrasonographic diagnosis of Multiple gastric duplication cysts ;A case report

吉田 美鈴1, 平井 都始子1, 丸上 永晃1, 山下 奈美子1, 弓場 文麿1, 森本 由紀子1, 中島 祐子1, 齊藤 弥穂1, 金廣 裕道2, 大石 元1

Misuzu YOSHIDA1, Toshiko HIRAI1, Nagaaki MARUGAMI1, Namiko YAMASHITA1, Humimaro YUBA1, Yukiko MORIMOTO1, Yuko NAKAJIMA1, Miho SAITO1, Hiromichi KANEHIRO2, Hajime OHISHI1

1奈良県立医科大学付属病院中央内視鏡・超音波部, 2奈良県立医科大学付属病院消化器一般外科・小児外科

1Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 2Department of surgery, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
消化管重複症は舌根から肛門までの全消化管に発生する先天奇形であり,胃重複症は重複腸管の中でも稀な疾患である.その大部分は単発性であるが,今回我々は非常に稀な多発性の胃重複症で,しかも壁の層構造と由来臓器の同定に超音波が有用であった一例を経験したので,超音波像を中心に報告する.
【症例】
症例は9ヶ月の女児.主訴は 嘔吐と下痢.既往歴は臍ヘルニア,家族歴は鎖肛(母),幽門狭窄(姉)がある.平成20年7月頃から嘔吐・下痢が出現し,近医を受診.腹部超音波検査で腸管浮腫と腹水を認め,腸閉塞の疑いで当院小児科に精査,加療目的で紹介入院となった.現症は,軽度の発熱あるも腹部は平坦・軟であった.入院時の血液検査では,軽度の炎症反応の亢進と,貧血を認める以外に明らかな異常を認められなかった.
【画像所見】
イレウスの原因精査のために施行した造影CTでは,胃大彎後壁から臍部に至る腫瘤を認め,周囲に腹水を伴っていた.造影後,腫瘤壁には層状の造影効果を認めた.層構造を有し,臍部へ連続する点から重複腸管や腸重積,メッケル憩室等を疑ったが,由来臓器が不明確であったため,この同定を目的として腹部超音波を施行した.超音波装置はLOGIQ7,9L・M12Lプローブ.胃の尾側に嚢状の管腔構造を認め,前庭部大弯側に一部連続していることが確認でき,管腔壁は胃と同様の5層構造を示した.カラードプラ法では,胃大網動脈と思われる血管が管腔構造を栄養し,豊富なカラー表示が観察された.管腔構造と胃との連続部周囲から右側に約4cm,高エコー部分と嚢胞部分が混在する不整形腫瘤を認めた.また腹水貯留を伴っていた.以上の所見から胃重複症と診断するも腹水貯留や腫瘤と管腔構造との関連,炎症の原因は不明であった.その後,
炎症所見が強くなり緊急開腹手術となった.術中,胃大彎には3ヵ所の重複胃管を認め,一部が穿破して膿瘍を形成していた.不整形腫瘤は大網に被胞された膿瘍であることが確認された.重複胃管と胃内腔に連続性はみられなかった.
【考察】
重複胃管の超音波検査所見としては,異常管腔内の胃粘膜と筋層の存在を反映したtarget like signやechogenic inner rimとよばれる所見が報告されている.本例では,高周波プローブを用いてより高エコーを示す胃粘膜層と低エコーを示す筋層とが明瞭に描出できた.しかもそれが,通常の胃壁筋層と連続していることで術前診断でき,確定診断に有用であった.多発性の胃重複症は,我々が検索した限りでは本邦で4例目と非常に稀な病態であったと考えられた.しかも本疾患における穿孔の合併頻度は少なくなく,胃と重複胃管に交通のない症例では穿孔していても遊離ガスが認められず,ピットフォールになる可能性があると考えられた.