Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化管

(S486)

体外式超音波検査が術前診断に有用であった回腸子宮内膜症の一例

A case of endometoriosis of the ileum in which ultrasonography was useful in preoperative diagnosis

竹之内 陽子1, 畠 二郎2, 山下 都1, 中武 恵子1, 谷口 真由美1, 小島 健次1, 眞部 紀明2, 今村 祐志3, 蓮尾 英明4, 春間 賢3

Yoko TAKENOUCHI1, Jiro HATA2, Miyako YAMASHITA1, Keiko NAKATAKE1, Mayumi TANIGUCHI1, Kenji KOJIMA1, Noriaki MANABE2, Hiroshi IMAMURA3, Hideaki HASUO4, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学内科学食道胃腸科, 4川崎医科大学総合臨床医学

1Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Endoscopy and Ultrasound, Dept.of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Gastroenterology, Dept. of Internal Medicine, Kawasaki Medical School, 4General Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
腸管子宮内膜症は全子宮内膜症の約10%を占めており,腸管の部位別では大部分が直腸・S状結腸に発生し小腸は約7%と比較的少なく,腸閉塞症状を約70%に認めると報告されている.術前診断率は約30%程度で,術後病理学的検索によって診断されることが多い.検索した限りでは体外式超音波検査(以下US)にて術前診断された報告は皆無であった.そこでUSにて術前診断が可能であった症例を経験したので報告する.
【症例】
40歳代,女性.
【主訴】
腹痛.
【既往歴】
特記すべきことなし.
【現病歴】
200X年2月17日下腹部痛が出現し,一時軽快したが再度増悪したため2月27日から3月10日まで腸閉塞の診断にて前医に入院した.症状が軽快したため退院したが,再度下腹部痛が出現したため3月12日当院に精査加療目的にて入院となった.
【入院時現症】
身長160 cm,体重55 kg,血圧116 /68 oHg,脈拍76 /分・整,体温36.4 ℃.腹部は膨隆し臍部を中心に圧痛を認めたが,反跳痛や筋性防御はみられなかった.
【血液生化学検査所見】
白血球数12400 /μl,CRP 2.18 mg/dlと炎症反応の軽度亢進,小球性低色素性貧血を認めCA125は64 U/mlであった.
【腹部立位単純X線検査】
鏡面形成像を伴う小腸拡張像を呈していた.
【腹部造影CT検査およびMRI検査】
回腸を中心とした腸管拡張が見られ,回腸末端に閉塞機転を認めるもその原因は特定されなかった.
【体外式超音波検査】
子宮より右側の骨盤腔内の回腸に約2 cmの範囲で内腔狭窄を認め,より口側は拡張し閉塞機転と考えられた.同部位は限局性・偏側性の壁肥厚で内腔側は粘膜および粘膜下層に覆われていた.ソナゾイド静注下造影超音波検査上,辺縁には比較的豊富な血管網が見られたが,中心部には染影が見られなかった.さらに4日後には偏側性の壁肥厚は軽減されており,生理周期に伴うUS像の推移からも回腸の子宮内膜症が疑われた.なお,使用機種は東芝社製SSA‐700A,探触子は3.75 MHzコンベックスプローブあるいは6〜7 MHzリニアプローブを適宜使用した.
【臨床経過】
経ゾンデ的小腸X線検査では回腸末端に狭窄を認め,バリウムの通過は長時間にわたり保存的治療は困難と判断し,回腸部分切除術が施行された.病理組織学的検索において,回腸壁肥厚の主体は粘膜下層から筋層で,間質を伴う子宮内膜腺組織が散在していた.周囲に変性や線維化を伴っており悪性所見はみられず,回腸子宮内膜症と診断された.術後経過は良好で,GnRHアゴニスト療法を行い再発はみられていない.
【考察】
腸管子宮内膜症は子宮内膜組織が腸管の漿膜に生着し,徐々に増大しながら筋層,粘膜下層,粘膜へと進展していき,その病変は粘膜下腫瘍の形態を呈していることが多い.本症例は他の画像診断では診断困難であったが,USで粘膜下腫瘍様の形態,造影所見,月経周期に伴う変化等から術前に回腸子宮内膜症を疑うことが可能であった.層構造を詳細に観察すること,成熟期の女性では本疾患も考慮し場合によっては経過観察することも重要と思われた.
【結語】
USは回腸子宮内膜症の術前診断に有用であると考えられた.