Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例4

(S480)

先天性下大静脈奇形を有した成人四症例

Four adult casees of congenital anomaly of the inferior vena cava

角 隆1, 新田 江里1, 庄野 智子1, 福間 麻子1, 吉冨 裕之1, 長井 篤1, 田邊 一明2

Takashi SUMI1, Eri NITTA1, Tomoko SYOUNO1, Asako FUKUMA1, Hiroyuki YOSHITOMI1, Atsushi NAGAI1, Kazuaki TANABE2

1島根大学医学部附属病院検査部, 2島根大学医学部附属病院循環器内科

1The Division of Laboratory, Shimane University Hospital, 2The Department of Cardiovascular Medicine, Shimane University Hospital

キーワード :

【はじめに】
心臓超音波検査において下大静脈径とその呼吸性変動を評価することは,血管内ボリュームや平均右房圧を推定するのに重要である.先天性下大静脈奇形には,肝部下大静脈欠損,左下大静脈,重複下大静脈などがあるが,これらの疾患では心血管奇形,臓器位置異常,不整脈などを合併する場合のあることが知られている.今回,我々は,下大静脈奇形を有する四症例を経験したので報告する.
【症例1】
81歳,女性(左下大静脈,肝部下大静脈欠損,半奇静脈連結,左上大静脈遺残(重複上大静脈)).房室ブロックによる徐脈のため入院.経胸壁心臓超音波検査にて,腹部大動脈の左背側に管腔構造を認めた.管内に頭側へ向かう静脈性の血流を認めたことから,左下大静脈と考えた.肝静脈は下大静脈と合流せず,右房に直接流入していたため,肝部下大静脈欠損と診断.さらに,冠静脈洞拡大を認め,左上大静脈遺残が疑われた.経食道心臓超音波検査,静脈造影,CTにより,下半身の静脈血は,左下大静脈→半奇静脈→左上大静脈→冠静脈洞→右房の経路で還流していることが判明した.右上大静脈は存在したが,無名静脈は存在しなかった.これらの診断から,大腿静脈からの右心カテーテル検査は回避し,ペースメーカーの植え込み術も右鎖骨下静脈経由で行なった.
【症例2】
57歳,女性(肝部下大静脈欠損,奇静脈連結).心室中隔欠損(II型),大動脈弁閉鎖不全による心不全に対し,欠損孔閉鎖および大動脈弁置換術目的で入院.経胸壁心臓超音波検査にて,下大静脈は肝静脈と合流せず,肝静脈背側から右房背側を上行していることがわかった.この血管は造影CTにて,上大静脈に合流していることが判明し,肝部下大静脈欠損,奇静脈連結と診断した.開心術前に下大静脈奇形を把握できていたため,人工心肺の脱血に際し,従来の方法に加えて右大腿静脈からも脱血用カテーテルを追加して手術を行なった.
【症例3】
28歳,女性(左下大静脈,肝部下大静脈欠損,半奇静脈・奇静脈連結).3歳時に徐脈を指摘.9歳時に洞機能不全に対し,永久ペースメーカー植え込み術を施行.今回,永久ペースメーカー電池交換のため入院.内臓逆位,多脾症を合併.心臓超音波検査にて,肝静脈は直接右房に還流し,腹部大動脈の左背側を上行する左下大静脈を認めた.この血管は造影CTにて,下行大動脈後方を上行し,左房レベルで胸椎前方を右側に向かい,さらに前方の上大静脈に合流していた.以上より,下半身の静脈血は,左下大静脈→半奇静脈→奇静脈→上大静脈→右房の経路で還流していることが判明した.多脾症では徐脈性不整脈を伴いやすいことが知られており,本症例もこれに該当すると考えられた.
【症例4】
64歳,女性(重複下大静脈).呼吸困難のため入院.著明な低酸素血症,肺高血圧を認めた.胸部造影CTにて両側肺動脈内に多発する血栓を認めたため,急性肺動脈塞栓症と診断.血栓溶解療法,抗凝固療法を行なった.腹部造影CTにて,腎部から末梢側において左右に分かれている重複下大静脈が確認された.下肢静脈血栓を認めたため,両側の下大静脈各々にフィルター留置を行なった.
【考察】
心臓カテーテル検査,永久ペースメーカー植込み術,開心術,下大静脈フィルター留置などの施行前に,下大静脈奇形を診断することにより,検査や治療を安全かつ有効におこなうことができた.
【まとめ】
日常の心臓超音波検査において,下大静脈径とその呼吸性変動の評価は重要であるが,下大静脈奇形についての認識も必要と考えられた.