Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例3

(S479)

腹部大動脈瘤術後感染により多様な塞栓を認めた一例

A case of multiple arterial emboli after replacement of AAA by artificial vessels

林 愛子1, 貝阿弥 裕香子1, 松下 容子1, 松井 隆1, 辻井 一行1, 上山 昌代1, 玉置 万智子1, 綿貫 裕1, 由谷 親夫2

Aiko HAYASHI1, Yukako KAIAMI1, Yohko MATSUSHITA1, Takashi MATSUI1, Kazuyuki TSUJII1, Masayo UEYAMA1, Machiko TAMAOKI1, Yutaka WATANUKI1, Chikao YUTANI2

1姫路赤十字病院検査部生体検査課, 2岡山理科大学理学部生命科学科

1department of clinical laboratory, himeji red cross hospital, 2department of life science faculty of science, okayama university of science

キーワード :

【背景】
腹部大動脈瘤の外科的治療には現在,人工血管置換術とステントグラフト内挿術が選択されている.人工血管置換術は適応範囲が広く,遠隔成績も良好とされている.しかし,人工血管もステントグラフトも感染の温床となり,治療を困難にする場合もある.今回我々は人工血管置換術後にグラフト感染を発症し,多様な塞栓形態を認めた症例を経験したので報告する.
【症例】
56歳,男性.平成15年に腹部大動脈瘤による人工血管置換術後,平成20年2月4日に5日前より続く39度の発熱と右下肢筋肉痛にて当院内科受診.診察にて右下肢に点状出血様斑を認めた.皮膚科に紹介になるも原因は不明であり,抗生剤の内服にて経過観察となったが,2月13日に再診され,持続する発熱と右下肢痛の増強による歩行困難を認めた.不明熱精査と感染性心内膜炎除外の目的にて循環器内科紹介となった.この時,右大腿二頭筋腱部に硬結認め,その詳細検索目的にて超音波検査施行した.検査にて右大腿二頭筋内に約15×51mmの膿瘍を認めた.腫瘤の性状は境界不明瞭で内部は膿を疑う点状エコーを認め,内部血流は認めず,周囲に豊富な血流を認めた.これにより形成外科に紹介となり,入院加療となった.患部は切開,排膿し,抗生剤による治療が継続されたが,発熱は遷延していた.膿からはPeptostreptococcus属が検出された.2月26日に退院となったが,同日夜,右足背の疼痛が出現,翌日形成外科に再診となり,詳細検索にて超音波検査施行,検査にて足背動脈に塞栓像を認めた.塞栓像は輝度が低く,可動性は認めなかった.非閉塞部は1mm前後の血管径に対し,閉塞部は約3mmの拡大を認め,感染性動脈瘤が示唆された.同時に心臓超音波検査施行されたが,明らかな疣贅像は認めなかった.これにより腹部大動脈瘤人工血管置換術後であることから,グラフト感染の可能性を考慮して他院心臓血管外科に紹介となった.他院CTにてグラフト感染が強く疑われ,グラフト抜去と腹部大動脈人工血管再置換術が施行され,その後軽快退院された.
【結語】
腹部大動脈瘤術後グラフト感染による感染性塞栓により,筋内膿瘍と足背動脈閉塞および感染性動脈瘤が示唆された症例を経験した.