Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例3

(S478)

重複僧帽弁を合併した心室中隔欠損症例-僧帽弁狭窄判定のピットフォール-

A case of ventricular septal defect with double-orifice mitral valve: pitfalls for assessing mitral stenosis

高橋 信, 佐藤 陽子, 小山 耕太郎

Shin TAKAHASHI, Yoko SAYO, Kotaro OYAMA

岩手医科大学附属循環器医療センター小児科

Pediatric Cardiology, Iwate Medical University Memorial Heart Center, Morioka, Japan

キーワード :

【はじめに】
重複僧帽弁(double orifice mitral valve: DOMV)は先天性僧帽弁狭窄(congenital mitral stenosis: CMS)の一つに分類される稀な僧帽弁形態異常で, 弁尖が2つに分割される弁形態異常と弁下組織の異常を伴う疾患である.他の先天性心疾患を合併することが多く, その中で心室中隔欠損(ventricular septal defect: VSD)の頻度は約33%と報告されている.DOMVの重症度は狭窄や逆流の程度で決定されるが,心内短絡疾患を伴っているとその評価は難しい.今回,DOMVに大きなVSDを伴った重度の肺高血圧症の症例に対し,心内短絡修復術を施行し段階的に僧帽弁狭窄の程度を心臓超音波検査と心臓カテ ーテル検査を用いて検討を行った.
【症例】
11ヵ月男児.出生後,VSDとDOMVによるCMSを確認.生後9ヵ月頃から運動時の息切れと易疲労感が目立ち始め,検査および手術目的で入院となった.聴診では胸骨左縁第4肋間に3/6度の汎収縮期雑音と心尖部に2/6度の拡張期雑音が聴取された.胸部X線でCTR 55%の軽度の心拡大および肺血管陰影増強がみられ,心電図では右室肥大所見を示した.心臓超音波検査(SONOS 5500.Philips)では8mmの膜様部周囲心室中隔欠損を認め,同部位での左右最大圧較差は3mmHgで肺高血圧の所見を呈していた.僧帽弁形態は,僧帽弁口が2つに分割されそれぞれの腱索が前後乳頭筋に独立して付着するcomplete bridge typeのDOMVを認めた.左房径は31×28mmで拡大し,僧帽弁流入血流の加速所見があり最大圧較差 23mmHg,平均圧較差 9mmHgで僧帽弁狭窄所見が認められた.心臓カテーテル検査では,肺動脈圧 78/39/59mmHg,左室圧 80/EDP8mmHg,平均肺動脈楔入圧 23mmHg,平均僧帽弁圧較差 19.5mmHgで著明な肺高血圧と僧帽弁狭窄を認めた.肺高血圧による肺血管閉塞性病変の有無を評価するためNO吸入負荷試験を行った.肺体血流比は1.8から3.1に上昇し,肺血管抵抗は6.6単位から3.0単位に低下し肺血管閉塞性病変は否定した.心室中隔欠損による相対的僧帽弁狭窄の程度が不明のため,手術は心室中隔欠損パッチ閉鎖術のみを行い,再度術後に僧帽弁狭窄の程度を評価する方針とした.術後1年には,易疲労感はなく聴診で心尖部に1/6度の拡張期雑音のみが聴取された.胸部X線は心胸比 50%で肺血管陰影は正常であり,心電図の右室肥大所見は消失していた.心臓超音波検査(iE33. Philips)では心室中隔欠損の遺残短絡はなく,左房径は20×23mmと縮小し,僧帽弁流入血流の最大圧較差 10mmHg,平均圧較差 4mmHgで僧帽弁狭窄所見は軽減していた.心臓カテーテル検査では,肺動脈圧 25/12/19mmHg,左室圧 92/EDP11mmHg,平均肺動脈楔入圧 13mmHg,平均僧帽弁圧較差 6.8mmHgで肺高血圧は認めず,僧帽弁狭窄は軽減していた.プロタノール負荷試験(max HR 170bpm)を行い平均僧帽弁圧較差は10mmHgに上昇したが,肺体血圧比は0.26から0.29への軽度の上昇であった.僧帽弁狭窄の手術介入は不要と判断した.
【まとめ】
心室内左右短絡疾患を伴ったMSでは,相対的MSの程度を念頭に入れ評価する必要があり,僧帽弁手術介入については慎重を要する.