Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例2

(S475)

心肺停止で搬送され心エコーで重症僧帽弁狭窄症にタコツボ心筋症の合併と思われた1例

A case of CPA caused by severe mitral stenosis with Takatubo cardiomyopathy

西山 裕善1, 太田 剛弘1, 谷川 崇2, 金子 みどり2, 宇多 里恵子2, 大塚 憲一郎1, 岩田 真一1, 紙森 公雄1, 栁 志郎1

Hiroyosi NISHIYAMA1, Takahiro OTA1, Takashi TANIGAWA2, Midori KANEKO2, Rieko UDA2, Kenitirou OTUKA1, Shiniti IWATA1, Kimio KAMIMORI1, Shirou YANAGI1

1府中病院循環器科, 2府中病院生理機能検査室

1Dept.of Cardiology, Fuchu Hospital, 2Dept. of Clinical Laboratory, Fuchu Hospital

キーワード :

【症例】
52歳 女性
【主訴】
息苦しさ,腹部痛
【現病歴】
25年前1児出産後も特に日常生活に問題はなかった.2009年1月トイレ後に呼吸苦出現.救急車到着時HR30台,脈触れず心肺停止と判断し心マッサージ開始し心拍再開後,当院に救急搬送となった.
【既往歴】
10年前腸閉塞で手術.近医通院中.
【入院時現症】
意識混濁,血圧96/76 脈拍70 心音:1音亢進(OS) 心雑音:心尖部に拡張期ランブルを聴取 肺野:異常なし 腹部:異常なし 下腿浮腫なし.
胸部レ線:心拡大,左第2弓突出.
ECG:洞調律 HR 60 II,III,aVf,V2-V6 T波 逆転,QT延長 ST-T 変化なし.
血液生化学データ:TP 7.0 ALB 4.2 AST 158 ALT 96  ALP 572 BUN 25 クレアチニン 0.6 LD 398 CK 96 総ビリルビン 0.27 血糖 362 CRP 0.57 白血球数 8100 Hb 12.血小板数 25 PH 6.82 PCO2 94 PO2 79 HCO3 15 BE -21 SaO2 80
【入院後経過】
救急室入室時は弱いながらに自発呼吸あり.収縮期血圧95/58 mmHg,SaO2 90torr前後.瞳孔 左右とも3mmとやや拡大,対光反射なし.その後PaO2 68となり気管内挿管しDOBの点滴を開始した.徐々に意識回復,症状は改善傾向で血圧上昇しDOB中止とした.緊急心エコーでは重症僧帽弁狭窄症(MS:MVA 0.65cm2)で両弁に強い肥厚があり前尖は弁中央部まで石灰化し肥厚は腱索,乳頭筋に及び可動性不良であった.左室は心尖部に特に強い左室のび慢性壁運動低下(LVEF30%)を認めた.2日後には心尖部に限局したhypokinesisを残すが,左心機能は改善していた(LVEF52%).心電図変化,生化学データから重症僧帽弁狭窄症にタコツボ型心筋症を合併した意識消失に至ったと考えられた.
【まとめ】
タコツボ心筋症は中年の女性に多く,一般的に予後良好とされているが心不全,致死性不整脈,心破裂,血栓塞栓症など重篤な合併症例の報告もある.本例は初発時に心肺停止を来たし心原性ショックで発現した.緊急心エコーで心尖部がタコツボ様形状で,広範な壁運動低下と重症僧帽弁狭窄症が指摘され,痛みなどによるストレスを契機にタコツボ心筋症を発症し重症MSの血行動態が背景にあるため,高度の低心拍出状態に陥り心肺停止(PEA)に至ったと思われる.重症MSの合併例の報告は少なく基礎疾患を有する例にタコツボ心筋症を発症すると一過性低左心機能が致死的に至る危険性ありが迅速な治療が必要と考えられた.