Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例2

(S474)

心膜液貯留による心不全症状を契機に発見された心臓血管肉腫の1手術例

Operative Case of Study:Primary Cardiac Angiosarcoma with Pericardial Effusion

吉川 尚男1, 鈴木 真事2, 大塚 健紀1, 大崎 司2, 土田 貴子2, 伊藤 信吾1, 山下 祐正3, 内田 真3, 尾崎 重之3, 杉 薫1

Hisao YOSHIKAWA1, Makoto SUZUKI2, Takenori OTUKA1, Tukasa OSAKI2, Takako TUCHIDA2, Shingo ITO1, Hiromasa YAMASHITA3, Makoto UCHIDA3, Shigeyuki OZAKI3, Kaoru SUGI1

1東邦大学医療センター大橋病院循環器内科, 2東邦大学医療センター大橋病院 臨床生理機能検査部, 3東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科

1Division of Cardiovascular Medicine, Toho Univesity Ohashi Medical Center, 2Division of Clinical Physiolosy, Toho Univesity Ohashi Medical Center, 3Division of Cardiovascular Surgery, Toho Univesity Ohashi Medical Center

キーワード :

症例は40歳の男性.主訴は労作時の呼吸困難.平成20年1月,感冒症状にて近医を受診,胸部X線にて心拡大を指摘されたが放置していた.同年9月初旬頃より労作時の呼吸苦を認めたため再度受診.胸部X線にて心拡大,経胸壁心エコーにて大量の心膜液貯留と右房内腫瘍を疑われ近医入院となる.心膜液による心不全の疑いにて心膜ドレナージ術を行い,血性の心膜液を約800ml吸引し,その後精査加療目的にて当院に入院となった.入院時の経胸壁心エコーでは右房内の外側壁に接している68×40mm大の腫瘍を認め,可動性は認めなかった.全周性に約500ml程度の心膜液貯留を認めた.右側臥位による胸骨右縁アプローチにて上大静脈付近へ到達する腫瘍エコーを認めた.経食道心エコーでは心腔面側に凹凸不正な腫瘍を認めたが,腫瘍内の血流は検出されず,上大静脈に一部浸潤を認めていた.各種検査にて転移巣を検索したが明らかな異常を認めなかったため,心臓原発の悪性腫瘍を最も疑った.冠動脈造影では冠動脈に有意狭窄は認めず,右冠動脈の右室枝より腫瘍に対して栄養血管を認めた.10月13日に腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は右心房の三尖弁輪から上大静脈入口部まで進展しており,また左右心房壁の外側まで進展していた.腫瘍の辺縁から約5cmところを切離し,下縁は三尖弁付近のところで切除した.右房の欠損部位はウマ心膜にてパッチ閉鎖を行った.術後の病理診断は心臓血管肉腫であった.術後,経過良好にて退院,外来にて経過観察中である.結語と考察:心膜液貯留による心不全症状を契機に発見された心臓血管肉腫の1手術例を経験した.術前には確定診断に至っていないが超音波像と臨床像から心臓原発血管肉腫を疑った.本症の予後は発症後から3から11ヶ月と報告され不良である.治療法についても手術療法,化学療法,放射線療法などが試みられているが予後の改善につながる確立された治療法はない.手術療法により腫瘍を摘出し,術後経過も良好である1例を報告する.
文献:Karin RETTMAR,et al. Primary Angiosarcoma of the Heart Report of a Case and Review of the Literature. Jpn Heart J 34:667-683,1993