Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例2

(S473)

ドブタミン負荷心エコー図検査が治療法選択に有用であった虚血性心筋症の1例

Usefulness of dobutamine stress echocardiography in ICM with functional MR to predict the effect of medical treatment; a case report.

山脇 康平1, 川合 宏哉1, 漁 恵子1, 福田 優子1, 岡田 真理子1, 則定 加津子1, 辰巳 和宏1, 大西 哲存1, 大北 裕2, 平田 健一1

Kohei YAMAWAKI1, Hiroya KAWAI1, Keiko RYO1, Yuko FUKUDA1, Mariko OKADA1, Katsuko NORISADA1, kazuhiro TATSUMI1, Tetsuari OONISHI1, Yutaka Ookita2, Kenichi HIRATA1

1神戸大学大学院循環器内科学, 2神戸大学大学院心臓血管外科

1Division of Cardiovascular, Kobe University Graduate School of Medicine, 2Division of Cardiovascular Surgery, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

71歳,女性.平成14年(65歳),慢性腎不全のため透析が導入された.平成15年12月(67歳),左前下行枝領域の急性心筋梗塞を発症し,当院に入院,冠動脈造影により重症3枝病変を認めた.心臓血管外科にて冠動脈バイパス術が施行された(LITA to #8, SVG to #4PD)が,左回旋枝は慢性閉塞と考えられ,また血管径が細く灌流域が小さいため,血行再建の適応とされなかった.術後にACE阻害薬やβ遮断薬の投与が試みられたが,透析中の血圧低下のため導入は困難であった.退院後は近医にて維持透析管理されていたが,平成20年2月に脳梗塞を発症し,近医に入院となった.リハビリテーション期における透析中に胸痛が出現し,同院にて心エコー図検査が施行され,左心機能低下の増悪と高度僧帽弁逆流が認められた.僧帽弁逆流を合併する狭心症の外科的治療を目的として,当院心臓血管外科を紹介され入院となった.当院における経胸壁心エコー図検査において,左室後壁は無収縮,左室心尖部は奇異性運動を認め,他の領域はびまん性の壁運動低下を認め,左室駆出率は28%であった.また,tetheringを伴う高度の機能性僧帽弁逆流を認め,僧帽弁輪径は3.0cm×3.3cm,coaptation depthは1.3cm,有効逆流弁口面積は0.22cm2であった.冠動脈造影検査では,左前下行枝及び右冠動脈へのバイパスグラフトは開存しており,左回旋枝は慢性閉塞が確認され,前回と同様の所見であった.心筋血流シンチグラフィでは,左室後壁の虚血を伴わない梗塞と側壁の小範囲の虚血を認めた.心筋生存性(viabil ity)を評価し,僧帽弁逆流の加療による改善を予測する目的にて,低用量ドブタミン負荷心エコー図検査を施行した.ドブタミンにより,後壁及び心尖部を除く左室広範囲の壁運動が改善し,また有効逆流弁口面積は0.08cm2と低下を認め,僧帽弁逆流量も減少した.左室収縮予備能が存在し,左心機能の改善により僧帽弁逆流の減少が推測され,また薬物療法が十分でない状況を考慮し,循環器内科に転科の上,透析後目標体重の調節を行いながらアンジオテンシンII受容体拮抗薬とβ遮断薬を少量より開始し,漸増した.心症状は改善し,心エコー図検査により僧帽弁逆流の減少と左室機能の改善を認め,第65病日に軽快退院となった.今回我々は,ドブタミン負荷心エコー図検査により壁運動とともに機能性僧帽弁逆流の改善を認めたことより薬物療法の効果予測を行い,実際にアンジオテンシンII受容体拮抗薬及びβ遮断薬に対する反応が良好であった,機能性僧帽弁逆流を合併する虚血性心筋症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.