清水 弘治¹, 太田 哲郎², 広江 貴美子³, 角 瑞穂³, 岡田 清治², 村上 林兒², 織田 禎二⁴, 吉冨 裕之⁵, 伊藤 早希², 田邊 一明⁵

Kouji SHIMIZU¹, Tetsurou OHTA², Kimiko HIROE³, Mizuho SUMI³, Seiji OKADA², Rinji MURAKAMI², Teiji ODA⁴, Hiroyuki YOSHITOMI⁵, Saki ITOU², Kazuaki TANABE⁵

¹松江市立病院　心臓血管外科, ²松江市立病院循環器内科, ³松江市立病院中央検査科, ⁴島根大学医学部付属病院循環器呼吸器外科, ⁵島根大学医学部付属病院　循環器内科

¹cardiovascular surgery, matsue city hospital, ²cardiovascular medicine, matsue city hospital, ³central clinical laboratory, matsue city hospital, ⁴cardiovascular surgery, shimane university hospital, ⁵cardiovascular medicine, shimane university hospital

キーワード :

急性心筋梗塞後の左室自由壁破裂は突然の循環虚脱を伴い救命率の極めて低い重篤な合併症である．今回経胸壁心エコー図検査にて左室自由壁破裂における破裂部位の血流を観察し得た症例を経験したので報告する．症例は85歳女性．家族と会話中に突然意識消失したため救急搬送された．来院時自発呼吸はあるも意識は昏睡状態であり，末梢の脈拍は触知せず．心電図上I,aVL,V5,V6でST上昇認め，血液生化学検査にて心筋逸脱酵素の上昇を認めた．心エコ−図検査にて心嚢液貯留と右室前面に血腫と思われる構造物，右室の虚脱を認め，また側壁の壁運動の低下を認めた．カラードップラーにて左室側壁心筋に重なってモザイク状の異常血流パターンが観察された．左室自由壁破裂，心タンポナーデの診断にて心嚢ドレナージ，大動脈内バルーンパンピング（IABP），経皮的心肺補助装置（PCPS）開始．引き続き行った冠動脈造影検査にて左冠動脈回旋枝#12の閉塞を認め，同部位の急性心筋梗塞が原因の左室自由壁破裂と考えられた．左室造影でも左室から心嚢への造影剤の漏出が認められた．緊急手術を実施．胸骨正中切開にて心膜切開．血性の心嚢液を認めた．これを取り除いて観察すると，穿孔部は心エコ−図所見と同様，左室高位側壁の回旋枝（鈍縁枝）の領域であった．心拍動下に閉鎖を試みるも周囲組織が脆弱であり閉鎖困難であったため，人工心肺装置を装着し，心停止下にfelt strip，ウマ心膜パッチを用いた穿孔部閉鎖術を施行した．本症例は断層像では直接心室瘤や心筋の穿孔を描出することは困難であったが心筋に重なって異常血流の存在を示すモザイク状のカラードップラーパターンが認められ，この部位の心破裂が示唆された．