Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例1

(S471)

心エコーにより早期に診断された心筋梗塞後心破裂の一例

A case of cardiac rupture subsequent to acute myocardial infarction diagnosed by echocardiography in emergency room.

福田 昌和1, 田中 伸明1, 藤井 章久1, 福田 聖子1, 小田 哲郎1, 中尾 文昭1, 藤井 崇史1, 鈴木 一弘2, 壺井 英敏2

Masakazu FUKUDA1, Nobuaki TANAKA1, Akihisa FUJII1, Seiko FUKUTA1, Tetsurou ODA1, Fumiaki NAKAO1, Takashi FUJII1, Kazuhiro SUZUKI2, Hidetoshi TSUBOI2

1山口県立総合医療センター循環器内科, 2山口県立総合医療センター心臓血管外科

1Cardiology, Yamaguchi Grand Medical Center, 2Cardiovascular Surgery, Yamaguchi Grand Medical Center

キーワード :

症例:70歳代女性.主訴:胸痛.現病歴:来院の1週間以上前から帯状疱疹のため右前胸部に疼痛があり,1週間前から痛みの部位が右前胸部から左前胸部へと変化した.来院前日の朝からは左前腕のしびれ感と疼痛を生じたが,やがて軽快した.その翌朝,再度左前腕のしびれ感が出現したため,当院を受診しようと外出の準備をしていたが,午前8時頃から冷汗を伴う胸痛を生じたため,救急車を要請して当院救急外来を受診した.
入院時現症:身長148cm,体重48kg,血圧149/102mmHg,脈拍 83bpm,SpO2 98%.頚静脈怒張なし,心音異常なし.明らかな心雑音,心膜摩擦音なし.
入院後経過:心電図・血液検査で前壁の急性心筋梗塞(recent MI)が疑われ,緊急冠動脈造影を実施することとし,準備が整うまでの間に救急外来のベッドサイドで心エコー検査を実施した.心尖部寄りの心室中隔から心尖部にかけてa〜dyskinesisで,その他の部位は壁運動良好だった.また,心窩部アプローチで心尖部と左室後壁の後方に少量のエコーフリースペースを認めた.同アプローチで心室の短軸像を描出すると,右室自由壁の虚脱所見を認めた(図).これにより,心筋梗塞後の心破裂(oozing type)と心タンポナーデへの進展途中であると考えられた.緊急冠動脈造影は中止とし,直ちに心臓血管外科へコンサルトし,左室自由壁破裂修復術を目的に同日緊急手術となった.
 術後1週間目の待機的冠動脈造影ではLAD #6に50%狭窄をみとめるのみであり,保存的治療の継続とした.
 まとめと考察:今回の症例では心カテ室に入室前に心破裂の診断を行うことができ,高リスクの冠動脈造影を避け,救命的な左室自由壁破裂修復術を行うことができた.急性心筋梗塞患者を受け入れる医療機関においては,緊急冠動脈検査を急ぐ場合が多いが,短時間でも心エコーで病態を観察することによってリスクの高い処置等を避けることが可能な場合があると考えられ,このような場面における心エコー検査の有用性が再認識された.

図:心窩部アプローチで少量のエコーフリースペースと右室自由壁の虚脱(矢印)を認めた.Liver: 肝臓,RV: 右室,LV: 左室.