Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例1

(S470)

体位変換によりチアノーゼが出現し,卵円孔開存の右左シャントを認めた1例

A case presenting cyanosis due to the right to left shunt through patent foramen ovale, changing in association to postural transform

金森 多美1, 米原 敏郎2, 小郷 美紀生1, 富田 文子1, 志水 秋一1, 浪崎 秀洋1, 早川 裕里1, 西冨 恵美1, 西上 和宏3

Tami KANAMORI1, Toshurou YONEHARA2, Mikio OGOU1, Ayako TOMITA1, Shuuiti SHIMIZU1, Hidehiro NAMISAKI1, Yuri HAYAKAWA1, Megumi NISHITOMI1, Kazuhiro NISHIGAMI3

1済生会熊本病院中央検査部心血管エコー室, 2済生会熊本病院脳卒中センター神経内科, 3済生会熊本病院心臓血管センター循環器内科

1Department of Cardiovascular Echolaboratory, Saiseikai Kumamoto Hospital, 2Department of Neurology, Stroke Center,Saiseikai Kumamoto Hospital, 3Department of Cardiology, Cardiovascular center, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

今回,体位変換によりチアノーゼが出現し,経胸壁心エコーで卵円孔開存による右左シャントを認めた症例を経験したので報告する.
【症例】
86歳,男性.既往歴として胸部大動脈ステントグラフト留置,前立腺癌に対して内分泌療法,糖尿病,発作性心房細動がある.
【現病歴】
2008年10月21日,気胸のため近医に入院加療中であった.10月28日18時過ぎ,意識レベルの低下と右麻痺が出現.頭部CTで脳梗塞を認め,当院へ転院となった.
【入院後経過】
来院時,血圧128/62,脈拍70/分で洞調律.意識レベルはJCS10であった.頭部MRIでは左中大脳動脈領域の広範囲な脳梗塞で,心原性脳塞栓症が疑われた.グリセロールによる抗浮腫療法を開始した.経胸壁心エコー検査では,左室壁肥厚,軽度の三尖弁逆流と大動脈弁逆流,左房の軽度拡大を認めた.発症10日目に,リハビリ目的のため車椅子乗車を試みたところチアノーゼがみられ,酸素飽和度の低下を認めた.また,右側への体位変換時にもチアノーゼが出現した.胸部X線および胸部CTでは明らかな異常所見を認めなかった.
 体位変換時の経胸壁心エコーでは,心房中隔瘤と卵円孔開存からの右左シャントを認めた.奇異性脳塞栓も考慮して下肢静脈エコーを施行した所,ひらめ静脈に血栓を認めた.体位変換による右左シャントの変化では,左側臥位の酸素飽和度は97%であったが,30度座位では酸素飽和度92%,右側臥位では酸素飽和度88%まで低下した.カラードプラによる評価では,体位変換により右左シャントの血流シグナルの増加が認められた.体位変換による酸素飽和度の低下の原因として,右左シャントの増大によるものが考えられた.ジヒテルゴット投与にて後負荷を上げることにより,左心系の圧が上昇して右左シャントが減少し,体位変換によるチアノーゼが緩和した.
【考察】
経胸壁心エコーは,体位変換による変化をリアルタイムで観察でき,体位変換によるチアノーゼの原因同定に有用であった.