Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
循環器:症例1

(S469)

うっ血性心不全を合併した原発性心臓骨肉腫の1例

Primary Cardiac Osteosarcoma with Congestive Heart Failure

松本 稔1, 船渡川 勝康1, 高木 正義1, 石原 優子2, 神田 順二3, 竹田 誠4, 鈴木 良夫5

Minoru MATSUMOTO1, Katsuyasu FUNATOGAWA1, Masayoshi TAKAGI1, Yuko ISHIHARA2, Junji KANDA3, Makoto TAKEDA4, Yoshio SUZUKI5

1国保旭中央病院中央検査科, 2国保旭中央病院内科, 3国保旭中央病院循環器内科, 4国保旭中央病院心臓血管外科, 5国保旭中央病院臨床病理科

1Clinical Laboratory, Asahi General Hospital, 2Internal Medichine, Asahi General Hospital, 3Division of Cardiology, Asahi General Hospital, 4Division of Cardiovascular Surgery, Asahi General Hospital, 5Division of Pathology, Asahi General Hospital

キーワード :

【はじめに】
心臓原発の悪性腫瘍は稀な疾患であり,その頻度は0.002〜0.28%と言われている.肉腫が中心であるが,血管肉腫が最も多く,骨肉腫は非常に稀である.今回我々は,心不全の発症を契機に発見された,原発性心臓骨肉腫患者の術前・術後の心エコーを記録できたので報告する.
【症例】
メニエール病で長期近医通院のADL自立した80歳女性.2008年8月30日頃より歩行により息切れを感じるようになり,9月5日頃より起坐呼吸も認めるようになった.9月9日近医受診し,うっ血性心不全の診断にて入院.心エコー検査で左房内腫瘤を認めた.左房内腫瘤は僧帽弁弁口を塞いでおり,左室流入障害を伴う左房内腫瘤が原因と考えられ,手術検討のため9月18日当院に転院となった.
入院時所見はVital:BP 94/64mmHg,HR 79/min,BT 35.7℃,SPO2 96%.Physical:両側下肺中心にcrackle(+),心尖部に全収縮期雑音Levine III/ Y.C−XP:心拡大(+),両側胸水貯留.ECG:四肢誘導低電位.9月19日の心エコー検査では,左房内に46×33mm大の辺縁の輝度が高く,可動性の低い腫瘤を認めた.腫瘤の辺縁は石灰化しているものと思われ,後方は音響陰影のため腫瘤の質的判断は困難であったが,粘液腫のような茎は認められず,左房後壁から広基性に発育していると考えられた.左室の動きは良好.僧帽弁弁口は腫瘤により塞がれ,MS様になっており,TRはsevereで,RV-RA圧較差103mmHgと高度の肺高血圧を合併していた.この時点で,粘液腫や血栓の可能性は低いと思われ,その他の心臓腫瘤が疑われた.経食道心エコー検査では石灰化の強い腫瘤のため条件が不良.腫瘤は心臓後壁に浸潤している印象あり,心臓悪性腫瘍が疑われた.CT・MRIでも左房後壁から広基性に発育する腫瘤を認め性状から肉腫が疑われた.なお,発生頻度から粘液腫も否定できないため,IL-6,ESRを測定したが,ともに明らかな上昇・亢進は認めなかった.NYHAIII〜IVの心不全の内科的なコントロールが困難となり,10月9日腫瘤摘出術を施行.腫瘤は左房背側から起こる広基性の隆起性病変で一部かなり硬い部分を認めた.がっちりと組織と癒着していたため,可及的に腫瘤を切除するも後壁を損傷しないように,かなり残しながらの切除となった.術中迅速診断及び病理組織診断にて骨芽細胞型骨肉腫と診断された.PETにて原発巣の検索をするも全身の他の部位に腫瘍性病変認めず,心臓原発の骨肉腫と判断された.10月17日術後の心エコー検査では,左房内に腫瘤は残存(39×15mm大)しているが,MS様所見は認めず.TRはmoderate認めるも,RV-RA圧較差は43mmHgと著明に減少していた.術後経過良好でC-XP上でもclear,胸水認めず,10月22日退院となった.