Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
基礎:基礎

(S463)

超音波エネルギーを利用した筋組織への経静脈的核酸導入法の検討

Intravascular delivery of plasmid DNA/siRNA into muscle by Bubble liposome and Ultrasound

根岸 洋一1, 関根 祥子1, 遠藤 葉子1, 鈴木 亮2, 丸山 一雄2, 新槇 幸彦1

Yoichi NEGISHI1, Shouko SEKINE1, Yoko ENDO1, Ryo SUZUKI2, Kazuo MARUYAMA2, Yukihiko ARAMAKI1

1東京薬科大学薬学部薬物送達学教室, 2帝京大学薬学部生物薬剤学教室

1School of Pharmacy, Tokyo University of Pharmacy and Life Sciences, 2Department of Biopharmaceutics, School of Pharmaceutical Sciences, Teikyo University

キーワード :

【目的】
骨格筋は遺伝子治療の有望な標的組織であり,疾患治療用のプラスミドDNAやsiRNAなどの核酸導入法が試みられている.中でも,筋組織を支配する血管を利用したものは,その特性を生かす核酸導入法として期待されている.すでに,静脈内投与による遺伝子導入法では,一時的に血流を減少させた下肢末端の静脈内へ,核酸溶液を大容量かつ急速静注することで筋組織内へと送達させる方法(ハイドロダイナミクス法)が開発されている.しかしながら,大容量の核酸溶液を急速静注することは,ヒトへ応用する場合に制御が容易ではないと考えられる.これまでに我々は,新規の遺伝子導入キャリアーとしてポリエチレングリコール修飾リポソームに診断用超音波造影ガスを内封したバブルリポソームの開発を行ってきた.このバブルリポソームは,超音波照射時のキャビテーション誘導により生じるジェット流で,一時的に組織や細胞膜透過性を亢進させる作用を有している.そこで,本研究ではバブルリポソームと超音波を併用し組織透過性を高めることで,血管内に貯留した核酸(プラスミドDNA・siRNA)を筋組織内に効率よく導入する方法を検討した.
【方法】
ポリエチレングリコール (PEG)で修飾したリポソームDPPC/DSPE-PEG 2000を調製し,超音波造影ガスであるパーフルオロプロパンを内封してバブルリポソームを調製した.マウス大腿部に止血帯を巻き,大伏在静脈よりバブルリポソーム(10 ug/10 uL)とルシフェラーゼ遺伝子をコードしたプラスミドDNAであるpCMV-Luc,または,pMCK-Luc(筋組織特異的な発現プロモーター(Muscle Creatine Kinase: MCK)を持つ)(30 ug/15 uL)の混合溶液(25 uL)を静注し,直ちに,体外から超音波照射(Frequency:1 MHz,Intensity:2 W/cm2,Duty:50 %,time:120 sec)し,数日後のルシフェラーゼ活性を測定した.また,同様の方法を用いて,ルシフェラーゼ遺伝子に対するsiRNA(siGL3)をpCMV-Lucとともに導入し,ルシフェラーゼ遺伝子発現のノックダウン効果を解析し,本導入法のsiRNAの導入能についても評価した.
【結果・考察】
バブルリポソームとプラスミドDNAの混合溶液を投与した場合,超音波照射群は非照射群に比べて高い遺伝子発現が認められた.静注した混合溶液を止血帯により下肢に貯留させた状態で,体外より超音波照射することで,筋組織への遺伝子導入効率が向上することが明らかとなった.
【結論】
以上のことから,本導入法は,プラスミドDNAのみならず,siRNAの導入においても筋組織を標的とした遺伝子治療における有用な一手段となりうることが示された.