Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
基礎:基礎

(S463)

広範囲の血流速推定のための広帯域ドプラ法

Wideband Doppler method for wide range estimation of blood velocity

田中 直彦

Naohiko TANAKA

芝浦工業大学システム工学部

College of Systems Engineering, Shibaura Institute of Technology

キーワード :

【はじめに】
 生体内の血流観測に広く用いられているカラードプラ法では,高速血流を観測したときにエイリアシングが生じる問題がある.そこで,広帯域パルスを送受波することで,広い範囲の血流速を推定する広帯域ドプラ法[1]を提案した.これまでに,ナイキスト限界を超える高速血流の推定における有効性を検討してきた.今回は,本方法の低流速推定における有効性について報告する.
【方法】
 広帯域ドプラ法と通常のカラードプラ法の低流速推定能を比較するために,流れのモデルに対して超音波パルスを送受波し,それぞれの方法で流速を推定した.用いた振動子は中心周波数2MHz,比帯域幅74%で,広帯域ドプラ法では1波バースト波,通常の方法では4波バースト波で駆動し,8回ずつ交互に送波して受波信号を得た.送波の繰り返し周期は256μsであり,超音波ビームは走査していない.受波は 50MSample/s,分解能14bit でA/D変換し,送波波形別に受波データを分割して,それぞれの方法での速度推定に用いた.
【結果】
 通常のカラードプラ法による速度推定結果をFig.1 に示す.また広帯域ドプラ法による速度推定結果を Fig.2 に示す.広帯域ドプラ法による結果の方が推定した速度のばらつきが小さく,低流速推定に適していることがわかる.広帯域ドプラ法では,多数個の位相スペクトル情報より最小二乗法で速度を求めており,この処理が推定速度のばらつきを抑える効果を生んでいる.
【まとめ】
 エイリアシング問題を解消する広帯域ドプラ法は,低流速の推定においても有効であることを示した.ただし実際の低速血流の観測では,従来のカラードプラ法と同様に,MTIフィルタの特性が重要となる.広帯域ドプラ法に最適なMTIフィルタの構成について,さらに検討を進めている.

参考文献
[1]田中直彦.エイリアシングを生じない血流速推定のための広帯域ドプラ法.超音波医学2008; 35(3):315-28