Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科2

(S459)

アキレス腱断裂の保存療法中にみられる断裂腱と腓腹筋の性状変化

Changes in gastrocnemius muscle and tendon architecture during conservative treatment of achilles tendon rupture evaluated by ultrasound imaging.

高橋 周, 猪苗代 敬, 細越 琢, 森戸 伸吾

Shu TAKAHASHI, Takashi INAWASHIRO, Taku HOSOGOE, Shingo MORITO

気仙沼市立病院整形外科

Dept. of Orthopedic Surgery, Kesennuma City Hospital

キーワード :

【目的】
アキレス腱断裂は主にスポーツ活動で起こり,治療は手術療法と保存療法に分けられる.保存療法は手術療法と比較して固定期間が長く,筋力の低下が大きいとされるが詳細な検討は少ない.本研究は保存療法時のアキレス腱と腓腹筋の性状変化を超音波診断装置を用いて観察することである.
【対象と方法】
2007年9月から半年間に当科を受診したアキレス腱断裂例で保存療法を行った男性4名,女性1名,平均年齢45.6歳.保存療法は,足関節約60°底屈位で腱断端が接触することを超音波診断装置で確認後,膝下ギプスで固定し,受傷1週目に硬性装具に変更し10週まで継続した.初診時,受傷後1,2,3,4,5,7,9,11週に下腿周径,腓腹筋内側頭の羽状角,断裂腱の癒合を調査した.日立社製超音波診断装置EUB-7500と14MHzリニアプローブを用いた.
【結果】
下腿周径は受傷直後から漸減し,受傷後5週目以降は横ばいとなった.腓腹筋内側頭の羽状角は受傷直後に健側の約1.2倍となり1週目で同等となった.その後5週目で健側の約67%まで漸減し,11週目まで継続した.受傷後1週目でのThompsonテストで足関節は底屈しないが,超音波で断裂部分を観察しながら足関節を他動的に動かすと,可動範囲は少ないが断裂部の両端が一体化して動くことが確認された.
【考察】
受傷直後の羽状角の増加は,腓腹筋と踵骨との連続性が失われ,張力が失われたことによると考えられる.その後羽状角が受傷後1週目に健常側と同等になった後に減少したことは,”腱が切離された状態の筋の羽状角は増加したままである”という報告(Meyer DC et al)と相違している.1週目で腱の癒合傾向が確認されたことと併せて考えると,保存療法の早期に断裂部はある程度の張力を伝達している可能性が示唆された.受傷後5週目で筋萎縮は完成し,その後回復しない.保存療法初期の腱断裂部分の強度を調査し,適切な時期・強度の腓腹筋の萎縮防止を加えた保存療法の確立を目指したい.