Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科2

(S458)

超音波で診断に苦渋したアキレス腱断裂の1例

A case of difficult ultrasound diagnosis of Achilles tendon rupture

山口 睦弘1, 皆川 洋至2

Mutsuhiro YAMAGUCHI1, Hiroshi MINAGAWA2

1大阪労災病院超音波室, 2城東整形外科整形外科

1Division of General Ultrasound, Osaka Rosai Hospital, 2Department of Orthopedi surgery, Johto Orthopedics

キーワード :

アキレス腱断裂は断端部に血腫が介在することによって超音波では明瞭に断端を描出することができ診断しやすい疾患の一つである.今回我々は超音波では断端が不明瞭で診断に苦渋した稀な断裂形態を呈したアキレス腱断裂症例を経験したので報告する
<症例および現病歴>
61歳男性 歩道と車道の間の30cmの段差を降りた瞬間右足に受傷.歩行は可能であったが爪先立ちは不能となり受傷3日後に来院.
<来院時現症>
視診上,アキレス腱の輪郭は不明瞭.
触診上,アキレス腱の部位に陥凹を触知した.
Thompson-simmond squeeze testでは右足部の底屈を認めなかった.
<超音波所見>
右アキレス腱には腱の正常パターンであるfibrillar patternの途絶が不明瞭であった.腱内と思われる部位に音響陰影を伴う点状高エコー像を認めた.周囲の血腫は全体に無エコー域ではなく微細点状高エコー域として描出された.
Thompson-simmond squeeze testをしながら動的観察を行ったが断端の同定が出来なかった.
<手術所見>
右アキレス腱のパラテノンは肥厚し腱は完全断裂していたが,断端の線維は互いに交錯しあっていた.右アキレス腱完全断裂によりアキレス腱縫合術を施行した.
<考察>
多くのアキレス腱断裂症例では断端周囲に血腫が存在することによって超音波上断端の認識が容易に行え診断に苦渋することはないが,本症例のように完全断裂にも関わらず断端の線維が交錯していたことや断端周囲の血腫に無エコー域が無かったことが超音波上断端が不明瞭になっていた原因だと思われた.また,Thompson-simmond squeeze testをしながらの動的観察で断端が同定できなかったことも断端の交錯した線維によって把握しずらくなっていたものと思われた.超音波画像を再読影すると腱内に認められた音響陰影を伴った点状高エコー像を呈している部分が断端ではないかと思われた.本症例の様に理学所見では明らかにアキレス腱断裂が示唆されたにも関わらず超音波上断端が不明瞭な症例では画像診断に頼らず理学所見を最優先し断裂を念頭に置き画像を丁寧に読影していく必要性があると思われた.