Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科2

(S457)

外側型野球肘(離断性骨軟骨症)の超音波検診

Medical-Check of osteochondritis dissecans of the humeral capitellum using ultrasonography

山口 睦弘1, 西川 志津1, 木田 圭重2, 森原 徹2, 松崎 正史3

Mutsuhiro YAMAGUCHI1, Shizu NISHIKAWA1, Yoshikazu KIDA2, Toru MORIHARA2, Masashi MATSUZAKI3

1大阪労災病院超音波室, 2京都府立医科大学大学院運動器機能再生外科学, 3ソニックジャパン株式会社CEO

1Division of General Ultrasound, Osaka Rosai Hospital, 2Department of Orthopaedics, Kyoto Prefectural University of Medicine, 3CEO, Sonic Japan Co., Ltd.

キーワード :

外側型野球肘は,投球動作による上腕骨小頭と橈骨頭の圧迫と剪断力によっておこる上腕骨小頭障害である.選手が肘の外側に痛みを感じて医療機関を受診するころにはかなり進行している場合が多く手術が必要であったり保存治療でも長期間を要する.また,治療を施しても選手復帰が無理な場合も少なくない.しかし,検診では早期発見が可能であり短期間の投球中止で完治も望めるため検診で見逃し無く拾い上げることが重要である.今回我々は野球肘検診に超音波検査を導入し外側型野球肘の検査法に対し若干の知見を得たので報告する.
<対象と方法>
対象は京都市内で行われた野球教室に参加した中学1年2年生285名とした.
超音波にて両側肘を肘伸展位で前方からおよび肘最大屈曲位で後方から走査し上腕骨小頭を観察し軟骨下骨表面の不整像や遊離骨片を離断性骨軟骨症の所見とし検索した.
使用装置は,SonoSite(USA)社製 MicroMaxx 使用探触はHFL38/13-6,M-Turbo使用探触子は,HFL38x/13-6,Esaote(Italia)社製 MyLab25使用探触子はLA523E.
<結果>
285名中8名(2.8%)に投球側に離断性骨軟骨症を認めた.検診時には8名全員に肘外側痛の訴えはなかった.8名の野球開始年齢は5歳から12歳に広く分布しポジションも外野手3名,内野手3名,投手2名と偏りはなかった.超音波では全例が軟骨下骨表面の不整像のみで遊離骨片は認めず単純X線の岩瀬らによる分類での初期像に一致すると思われた1).
8名中5名が医療機関を受診し全員に単純X線肘45度屈曲位正面像にて小頭外側に透亮像を認めた.また3DCTにおいても小頭外側の軟骨下骨に陥凹や不整像を認めた.単純X線と3DCTではほぼ同様の所見を得たが超音波では5名中3名が3DCTより軽微に描出されていた.
<考察>
離断性骨軟骨症は発見が遅れると完治は望めずスポーツ選手としての復帰を断念しなくてはならない場合もある.選手自身が肘痛を認識しながら休めばレギュラーから外されるとか,指導者自身に病識がなく選手に無理を強いるなどで実際に医療機関を訪れたときには手遅れの状態になっている場合も多い.スポーツ現場で検診をすることによって選手の状態を把握し休息や医療機関への受診を促すことができる.今回我々は超音波検査で離断性骨軟骨症を疑った選手に対してその場で医師より選手と指導者に対して超音波画像の提示と医療機関への受診を説明するという方式をとった.検診後わずか3週間で8人中5人が医療機関を受診したことは,超音波画像という客観性のあるデーターを提示することによって受診行動を促したものと思われる.また,医療機関を受診した5名中3名に単純X線写真と3DCTの所見と超音波所見が乖離していたのは,超音波検査を肘正面長軸走査のみで行っていたため障害部位の一部分だけを捉えて検査を終了し全体像を把握していなかった可能性が考えられる.今回3DCTにて障害部位の位置関係が明確になったのでこれを参考に超音波の走査方法を再考しより正確な病態を描出できるように検討したい.
<参考文献>
1)岩瀬毅信:スポーツによる成長期肘障害. 中国・四国整形外科学会雑誌, 1992;4(1):33-36.