Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科1

(S456)

上腕骨小頭障害の超音波検査による病期分類について

Staging of Capitellum Osteochondrosis by Ultrasonography

石崎 一穂1, 柏口 新二2, 岡田 智佐子2

Kazuho ISHIZAKI1, Shinnji KASHIWAGUCHI2, Chisako OKADA2

1東京厚生年金病院中央検査室, 2東京厚生年金病院整形外科

1Clinical Laboratory, Tokyo Kousei-nenkin Hospital, 2Orthopedics, Tokyo Kousei-nenkin Hospital

キーワード :

【目的】
現在,上腕骨小頭障害(以下小頭障害)の病期分類は,主にX線画像によって行われている.今回我々は,小頭障害の治療法の選択や経過観察に利用すること目的とした,超音波画像による病期分類を試みたので報告する.
【対象】
対象は2006年12月から2008年12月の間に本院スポーツ外来を受診し,肘の超音波検査を施行した男児27例(経過観察を含め65件)11〜17歳の肘を対象とした.
【方法】
全例,伸展位および最大屈曲位で小頭を描出し長軸像と短軸像で観察し患部の評価を行った.
遊離骨片は,肘全体を隅々まで観察して確認した.静止した状態で,骨片が母床から分離しているか否かの判定が困難な場合には,必ず肘の曲げ伸ばしによる動的検査行い判断した.
得られた超音波像から,障害の進行度を推察してクラス分けした.
分類方法は,X線画像による分類法を参考にして,I(病変が軟骨下骨の変性にとどまり遊離骨編を認めない)・II(障害が進行し一部の軟骨下骨が遊離しているか,完全に遊離しているも軟骨内に収まっているもの)・III(軟骨が破綻して骨片が母床から完全に分離してしまっているもの)の,大きく三段階に分類し,更にクラスIを障害部の大きさと膨瘤の有無からIa〜eに,クラスIIとIIIは大きな骨片か多数の小さな粒上の骨片かなどから,IIa〜c・IIIa〜cに分け,10クラスに分類した.
手術が施行された症例を用いて,手術所見と比較を行い動的検査の信頼性も検証した.
今回の分類法を使用して,27例の初回の超音波所見をクラス分類しその頻度を算出した.
超音波診断装置は東芝SSA770,中心周波数8MHzリニア型探触子を使用した.
【結果】
得られた超音波画像による質的診断と計測により長頭障害の病期を細かく分類することができた.
手術所見との比較で,11例中10例が術前所見と一致していた.
一致しなかった1例は,動的検査からエコー上遊離骨片が軟骨ごとはがれ母床と完全に分離していると判断していたが,術中所見では骨片は軟骨の中に収まっていた症例であった.
27例の各クラス頻度はクラスI9例(Ia:1・Ib:3・Ic:3・Id:2),クラスII5例(IIa:4・IIb:1・IIc:0),クラスIII13
例(IIIa:4・IIIb:8・IIIc:1)であった.
【考察】
今回,超音波画像による病期分類を試みたが,患部の大きさの計測やスキャニングによる多断面の超音波像からより細やかなクラス分けが可能であったと考える.
他の画像診断でも評価が難しい,骨片が母床から遊離し軟骨外へ完全に分離しているか否かの判断は,肘の曲げ伸ばしによる動的検査が有用でこの事から,精度の高いクラス分類が可能であることが示唆された.しかし,1例で手術所見との乖離例も存在していたため,観察方法を再考する必要性も示唆された.
初回検査時のクラス分類の分布から,来院する男児はすでに進行した障害が多く,病院での上腕骨小頭障害の早期発見には限界があることが再確認された.
今後は保存治療患者の経過を観察し,クラス分類が経過の判断や治療の選択に利用できるかを検討してゆきたい.