Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
整形外科:整形外科1

(S456)

足関節捻挫に対する超音波画像診断の有用性

Utility of the Ultrasonography for the Diagnosis of Ankle Sprain

皆川 洋至, 水谷 羊一, 片岡 洋一

Hiroshi MINAGAWA, Yoichi MIZUTANI, Yoichi KATAOKA

城東整形外科整形外科

Orthopedics, Johtoh Orthopedic Clinic

キーワード :

【目的】
足関節捻挫は日常診療で遭遇する機会が多い外傷の一つである.一般には,足関節を捻った,挫いたという病歴に加え,単純X線写真によって骨折が除外されたものに対し「足関節捻挫」という診断名が用いられる.単純X線写真では捻挫による靭帯や筋腱の損傷を直接評価できないため,ストレスX線写真や関節造影検査によって,間接的に損傷状態を評価しているのが現状である.しかし,超音波検査では主病変となる軟部組織損傷を直接評価できる利点がある.本研究の目的は,足関節捻挫に対する超音波画像診断の有用性を明らかにすることである.
【方法】
2008年9月から3ヶ月間に,足関節を捻ったことで外来受診した46名47足を対象とした.平均年齢30.3歳(8歳から72歳),男性22足,女性25足.全例に対し単純X線検査,超音波検査を行い,いずれでも明確な診断がつかなかったものにMRIを追加した.単純X線検査では,腫脹,疼痛部位に応じて足関節2方向,または足2方向を撮影した.一方,超音波検査では,足関節捻挫での障害頻度が高い外側支持機構(前脛腓靭帯,足関節外果,前距腓靭帯,二分靭帯,第V中足骨基部)の観察を全例に対して行い,腫脹,疼痛部位に応じて内側支持機構(内果,三角靭帯,後脛骨筋腱など),前足部の観察を追加した.超音波画像診断には日立EUB7500を用いた.
【結果】
足関節捻挫で外来受診した症例は10代(20/47足)が最も多く,20歳未満では男性(18/24足),20歳以上では女性(19/23足)に多い傾向があった.損傷頻度が最も高かった部位が前距腓靭帯16足で,内訳は靭帯断裂6足,陳旧性靭帯断裂の再発2足,腓骨付着部剥離骨折8足であった.前距腓靭帯断裂が全て12歳以上だったのに対し,前距腓靭帯の腓骨付着部剥離骨折は8足中7足が12歳以下であった.いずれも単純X線写真では診断できず,超音波検査でのみ診断できた.次に頻度が高かった二分靭帯損傷7足では,靭帯断裂が1足のみで,残り6足全てが二分靭帯の踵骨付着部である前方突起骨折であった.前方突起骨折も単純X線写真では診断困難で,超音波検査が診断確定に役立った.3番目に頻度が高かった第V中足骨基部骨折は6足で,いずれも40歳以上の中高年であった.第V中足骨基部骨折は単純X線写真,超音波検査いずれでも診断できたが,うち1足は前医で見逃されていた.この他,超音波検査では,前脛腓靭帯,足根管,短腓骨筋腱,後脛骨筋腱,三角靭帯,リスフラン関節,さらに靭帯や腱付着部の剥離骨折を直接画像診断できた.単純X線検査,超音波検査いずれでも明確な診断がつかずMRIを追加したのは,踵立方靭帯付着部剥離骨折1足のみであった.
【考察】
骨折を除外する目的で行われているはずの単純X線検査が,前距腓靭帯の腓骨付着部剥離骨折,踵骨前方突起骨折,第V中足骨基部骨折を見逃す可能性があり,全体の42.5%にも及ぶ事実が判明した.また,前距腓靭帯損傷は,小学生では腓骨の剥離骨折,中学生以上では靭帯断裂の形態を示すこと,さらに中高年の捻挫では踵骨前方突起骨折や第V中足骨基部骨折の頻度が増すことなど,足関節捻挫に対する病態の理解,さらに新たな治療法開発に超音波検査が威力を発揮していく可能性が示された.
【結論】
足関節捻挫に対する画像診断は,単純X線検査より超音波検査のほうが優れる.