Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
頭部・眼科:頭頚部血管

(S449)

網膜中心動脈パルスドプラ画像の検討

Investigation of pulsed Doppler images in central retinal arteries

山田 利津子1, 辻本 文雄2, 宮内 元樹3, 桜井 正児3, 市瀬 雅寿3, 上野 聰樹1

Ritsuko YAMADA1, Fumio TSUJIMOTO2, Motoki MIYA-UCHI3, Masaru SAKURAI3, Masatoshi ICHINOSE3, Satoki UENO1

1聖マリアンナ医科大学眼科学講座, 2聖マリアンナ医科大学臨床検査医学講座, 3聖マリアンナ医科大学超音波センター

1Department of Ophthalmology, St. Marianna University School of Medicine, 2Department of Laboratory Medicine, St. Marianna University School of Medicine, 3Ultrasound Center, St. Marianna University School of Medicine

キーワード :

【目的】
 網膜中心動脈(CRA)は眼窩内で眼動脈から分枝して,脳脊髄腔に入り,眼球の後方約10mmから視神経内に入り,視神経内で網膜中心静脈(CRV)と平行に走行したのち,視神経乳頭を通って4部分の網膜に分枝する.網膜内層と視神経の表面を栄養し,居状縁ではループ状に折り返し,網膜中心静脈となる終末血管である.一方視神経の両側を走行する短後毛様動脈(SPCA)は脈絡膜,網膜外層を栄養した後,渦静脈で長後毛様動脈と吻合するなど非常に複雑な走行をする.眼血流測定の際,CRAとSPCAは接近した場所で血流で血流採取を行うため,最高流速の大きさで両者を判別するという報告もあるが,両血管の血流異常を伴う疾患は各々異なる病態を示し,最高流速は必ずしも短後毛様動脈がCRAより大きいとは限らない.今回は網膜中心動脈のパルスドプラ画像採取時に観察される網膜中心動脈の上向きピークと網膜中心静脈にみられる下向きのピークについて考察した.
【対象と方法】
 延べ40名(年齢64.4+/−18.5歳)を対象とした.うち25名は内頚動脈狭窄症,15名は健康比較対象として測定した.超音波ドプラ検査は午後2-4時に仰臥位閉瞼下,ヒドロキシエチルセルロース点眼液を接触媒体としておこなった.超音波診断装置はSA-700(東芝),EUB-8500(日立)(探触子中心周波数は各々8,14MHzリニア電子スキャナー)を用いた.網膜中心動脈の信号はカラードプラ画像をみながら視神経乳頭の約2mm後方の 視神経内で捕らえた.短後毛様動脈の信号は眼動脈から分枝して視神経乳頭に沿って走行する部位で捕らえた.統計学的検討には各群間の平均値の差の検定はWelch検定で行った.
【結果】
対象ならびに比較対象の網膜中心動脈パルス波は下方に静脈の波形が同時に採取された.静脈波形は拍動性がみられ,立ち上がり時間は網膜中心動脈と比較して若干の位相差がみられた.網膜中心動脈と網膜中心静脈の頂値から頂値までの時間差は健康対象で0.164+/−0.036秒,内頚動脈狭窄症で0.306+/−0.088秒であり,内頚動脈狭窄で有意な(p<0.0002)延長を示した.
【考按】
網膜中心動脈は網膜内層の大部分を栄養して静脈へと帰る終末血管であるため,動脈の拍動が静脈へと伝播しやすい.それはあたかも指尖動脈に類似している.周知のように指先では動脈は毛細血管で動静脈吻合を通って静脈へと続く.このため指尖静脈には動脈のパルスが伝播され,静脈にも拍動波形が観察される.今回は眼窩内動脈パルス波形について観察し,全対象で網膜中心静脈の頂値が観察された.また網膜中心動脈収縮期最高流速値から網膜中心静脈最高流速値までの時間間隔は平均値で164msecで網膜循環遅延が推定される疾患で延長がみられた.
【結論】
網膜中心動静脈の最高流速値間の時間間隔(AP-VP time interval, AP-VPTI)は網膜循環時間と深い関連がある可能性が示唆された.