Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
体表:体表・その他/ new modality

(S444)

CADを用いた乳腺超音波検査における乳房腫瘤性病変診断の信頼性についての検討

Sonographic evaluation of breast lesions using CAD (Computer-aided Diagnosis)

尾上 薫1, 宮本 幸夫1, 中田 典生1, 西岡 真樹子1, 福田 国彦1, 内田 賢2

Kaoru ONOUE1, Yukio MIYAMOTO1, Norio NAKATA1, Makiko NISHIOKA1, Kunihiko FUKUDA1, Ken UCHIDA2

1東京慈恵会医科大学放射線医学教室, 2東京慈恵会医科大学乳腺外科

1radiology, Jikei university, 2breast surgery, Jikei university

キーワード :

【はじめに】
近年,日本の乳がん患者数は年々増加しており,現在,日本における乳がん罹患率は女性がんの第一位である.乳腺疾患の画像診断には,マンモグラフィー(MMG)の他,超音波検査,MRI,CTなどがそれぞれの目的に応じて利用されている.その中でも主に,MMGが早期発見の中心的な役割を果たしているが,MMGは若年層に多い高濃度乳房において,その精度が低くなる問題点がある.一方,超音波検査は,高濃度乳房における腫瘤性病変の診断精度が高く,近年,超音波を用いた乳房検診が我国において本格的に取り入れられようとしている.超音波検査は,主に形態学的に腫瘤の良悪性診断を行うが,その診断精度は施行者の技量に依存し,読影スタッフが不足している事もあり,CAD(Computer-aided Diagnosis)が注目され始めた.CADは,コンピューターを用いて画像解析を行い,病変の存在部位や質的評価を定量的に判断する.その情報を読影医にsecond opinionとして伝え,読影精度の改善を目的としている.今回我々は,CADが診断精度を高めるための一助になり得ると考え,乳腺超音波診断におけるCADの信頼性について検討した.
【対象】
乳腺超音波検査にて腫瘤性病変が認められ,2007年1月から2009年1月までに,当院で病理診断が得られた27例である.その内訳は,悪性病変21例(乳頭腺管癌8例,充実性腺管癌2例,硬癌7例,粘液癌1例,不明3例),良性病変6例(腺維腺腫4例,嚢胞内乳頭腫1例,硬化性腺症1例)である.平均年齢は,51.1歳(32〜89歳)であった.
【方法】
読影医が任意に選んだ超音波断層像について,CAD work stationを用いて病変解析を行い,病変のカテゴリーを分類した.それらと病理組織所見を対比することで,乳房腫瘤性病変に対するCADの信頼性を検討した.CADによる超音波所見は,BI-RADSの診断基準を参考に,以下のごとく分類した.病変の大きさ,乳頭腫瘍間距離(NTD)および存在部位は読影医が入力した.
超音波所見;形状(円・楕円・不整),乳腺組織の配列に対する方向(平行・平行でない),後方エコー(不変・増強・減弱・混合),エコーレベル(無・混合・高・低・等),辺縁(平滑・粗ぞう;多角,微細鋸歯状,スピキュラ,不明瞭),周囲組織の変化(乳管拡張,クーパー靭帯の変化,浮腫,構築の乱れ,皮膚肥厚,皮膚の引き込み),境界(乳腺境界線断裂の有無,ハローの有無),石灰化(粗大,腫瘤外微細石灰化,腫瘤内微細石灰化).
なお,今回用いたCADソフトは,Medipattern社製の「B-CAD」で,レポート作成支援システムも含んでいる.
【結果】
腫瘤性病変の平均長径は,18.3mm(4〜40mm)であった.悪性病変に対するCADによるカテゴリー分類の感度,特異度はそれぞれ,100%(21/21),16.7%(1/6)であった.また,正診率は81.5%(22/27)であった.
【考察】
今回の検討では,悪性病変に対する感度は高く,これらは検診における病変検出に有用であると考えられた.また,特異度は低かったが,これは対象とした症例の良悪性の分布に偏りがあった事,良性病変については,画像上,良悪性の鑑別が困難な症例が多かった事が原因と考えられた.画像上,典型的な良性病変であれば,特異度は高くなると予想される.また,今回の対象症例は比較的大きな病変であったため,今後,良性病変の他,小さい腫瘤性病変についてもさらなる検討が必要と考えられた.