市川 めぐみ¹, 武内 希巳江¹, 天谷 礼子¹, 清水 正雄², 中島 美智子³, 小林 正幸³

Megumi ICHIKAWA¹, Kimie TAKEUCHI¹, Reiko AMAYA¹, Masao SHIMIZU², Michiko NAKAJIMA³, Masayuki KOBAYASHI³

¹埼玉医科大学病院　中央超音波室, ²埼玉医科大学健康管理センター, ³埼玉医科大学包括地域医療部

¹US Center, Saitama Medical University Hospital, ²Health Management Center, Saitama Medical University, ³Comprehensive Regional Medical Service, Saitama Medical University

キーワード :

「目的」Real-time Tissue Elastography（超音波組織弾性映像法，以降エラストグラフィ）は探触子を当てる強さ，動かす速さ，ROIの設定などにおいてBモード検査とは若干異なった手技の習得が必要だが再現性に優れており，従来のBモード検査にエラストグラフィを加えることにより良悪性の診断能が高まると期待され，様々な報告がなされている．今回Bモード検査とエラストグラフィを同時に行い，乳腺腫瘍の性状および広がり診断について精査のみでなく，検診時にも利用可能となるか否かの観点で研究したので報告する．
「対象・方法」対象は乳腺腫瘍184例．超音波検査後全例手術が施行され組織学的検討がなされ悪性腫瘍137例，良性腫瘍47例であった．使用装置はEUB 8500．探触子はEUPL54M（13MHzリニア）を使用し，エラストグラフィに対しては7.5MHzの周波数を使用した．通常のBモード検査の所見は，日本乳腺甲状腺超音波医学会議が作成した乳房超音波診断ガイドラインに則り，カテゴリー1から5に分類した．このカテゴリーは数字が大きくなるほど悪性の可能性が高まり，カテゴリー3以上は要精査としている．エラストグラフィについては，Tsukuba Elastography Scoreに則りScore1から5に分類した．このScoreも数字が大きくなるほど歪みが少ない腫瘍，すなわち悪性の可能性が高まる．カテゴリー分類とScore分類を組み合わせて，良悪性の判定を行った．
「結果」病理診断で悪性と診断されたもののうち，Bモード像のみの検査でカテゴリー4以上と判断したものは全体の90％であった．また，病理診断で良性と診断されたもののうち，Bモード像のみの検査でカテゴリー2と判断したものは全体の50％であった．次に病理診断で悪性と診断されたもののうちエラストグラフィのみの検査でScore3以上となったものは95％であった．病理診断で良性と診断されたもののうちScore2以下は78％であった．悪性腫瘍に対しBモード像の検査にエラストグラフィを加えたときの超音波検査の診断率は97.8％，良性腫瘍に対しては74.5％であった．
Bモード像でカテゴリー3とは良性優位であるが悪性の可能性があるという境界病変である．今回全症例のうちカテゴリー3と評価したものは27症例であったが，病理診断にて14症例が悪性で，13症例が良性という結果であった．これらのエラストグラフィの結果は感度75％結特異度76.9％であったが，2cm以内の腫瘤像形成性病変に限った場合，診断率は98％であった．
「結語」Bモード検査とエラストグラフィを用いて検査を行うことにより非侵襲的に乳癌の検出が可能であり，今後の乳癌の拾い上げに関し有用な方法であると考えられた．