Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
体表:乳腺

(S440)

乳管の拡張を主体とする病変に対するductal echographyと細胞診

Ductal echogrphy and cytology of the lesions with mammary duct dilatation

奥野 敏隆1, 内田 浩也2, 登尾 薫2, 佐藤 信浩2, 山野 愛美2, 殿畑 友恵2, 毛利 衣子2

Toshitaka OKUNO1, Hiroya UCHIDA2, Kaoru NOBORIO2, Nobuhiro SATO2, Megumi YAMANO2, Tomoe TONOHATA2, Kinuko MORI2

1西神戸医療センター外科, 2西神戸医療センター臨床検査技術部

1Department of Surgery, Nishi-Kobe Medical Center, 2Department of Clinical Laboratory, Nishi-Kobe Medical Center

キーワード :

【はじめに】
血性乳頭分泌症例に対して従来,分泌液細胞診と乳管造影を行い,確定診断目的に乳管腺葉区域切除が行われることが多かった.しかし高性能超音波診断装置の普及と乳頭を中心に放射状に走査する“ductal echography”の概念のひろまりにより血性乳頭分泌の原因となる病変を超音波にて明確に捉えることが可能となってきた.さらにその乳管内病変に対して超音波ガイド下に穿刺吸引細胞診を行い,確定診断可能な症例が増加してきた.そして日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)のガイドラインに腫瘤像非形成性病変のなかの「乳管の拡張を主体とする病変」が記載され,その診断基準と取り扱いの指針が示された.
【目的】
乳管拡張を伴う病変の超音波カテゴリー判定の妥当性と分泌液細胞診および穿刺吸引細胞診の診断能の検討を行った.
【対象と方法】
“ductal echography”を行い,乳管の拡張を伴う病変を認め,切除により組織診断が確定した乳腺疾患16症例を対象とした.血性乳頭分泌例13例,腫瘤触知例が3例であった.JABTSのガイドラインの所見に基づき,超音波像の形態分類(I型:拡張乳管内の立ち上がり急峻な充実エコー,II型:拡張乳管内の立ち上がりなだらかな充実エコー,または多発エコー,III型:末梢側に充実性腫瘤を伴う拡張乳管,IV型:乳管内腔の広狭不整)を行った.血性乳頭分泌例は分泌液細胞診を行い,これで悪性と判定された2例を除き全例に超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行った.組織型別に形態分類,超音波のカテゴリー判定と細胞診判定を後ろ向きに検討した.
【成 績】
1)組織型別の内訳は乳管内乳頭腫9例,腺筋上皮腫1例,乳管内癌3例,浸潤性乳管癌3例(内1例が管内成分優位の浸潤性乳管癌,1例が微小浸潤癌)であった.2)形態分類:乳管内乳頭腫はI型7例,II型1例,III型1例,腺筋上皮腫の1例はII型,乳管内癌はIII型1例,IV型2例,浸潤癌はI型1例,III型1例,IV型1例であった.3)カテゴリー判定:乳管内乳頭腫9例中カテゴリー3:6例(67%),カテゴリー4:3例(33%).腺筋上皮腫1例はカテゴリー4.乳管内癌3例と浸潤性乳管癌3例は全例カテゴリー4であった.4)細胞診判定:乳管内乳頭腫9例は全例良性(内4例が乳頭腫と組織型推定).腺筋上皮腫1例は悪性と判定.乳管内癌3例および浸潤性乳管癌3例は全例悪性と判定した.正診率は94%であった.
【考 察】
JABTSのガイドラインにおいては拡張乳管内エコーに着目し,単発で立ち上がりが急峻なものは良性を示唆するとしてカテゴリー3,多発や立ち上がりがなだらかなものは癌を示唆するとしてカテゴリー4を付与している.癌は全例カテゴリー4,乳管内乳頭腫の67%にカテゴリー3が付与されていた結果は,カテゴリー判定の妥当性を示すものと考える.形態として末梢側に腫瘤を伴う乳管拡張は3例中2例,広狭不整を伴うものは3例とも乳癌であり,これらは乳癌を強く疑う所見であると考えられた.また,良性の腺筋上皮腫が悪性と判定されたことを除き乳頭腫・癌ともに細胞診の成績は良好であった.
【結 語】
“ductal echography”により血性乳頭分泌の責任病変の同定は可能であり,その適切なカテゴリー判定と明確に病変を捉えて穿刺する細胞診により術前の良悪性の確定診断は可能である.