Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
体表:乳腺

(S439)

超音波検査にて良性腫瘍と類似した所見を呈した浸潤性乳癌の特徴

Characteristics of breast cancer with benign sonographic features

久保田 敬, 岩佐 瞳, 八尋 孔幸, 小川 恭弘

Kei KUBOTA, Hitomi IWASA, Yosiyuki YAHIRO, Yasuhiro OGAWA

高知大学医学部放射線科

Radiology, Kochi Medical School

キーワード :

【目的】
乳房超音波診断のガイドラインにてカテゴリー分類の際,腫瘤像が不整形か軽い分葉形の判別は主観的になる.加えて,乳腺組織の低エコー部分に囲まれた場合は形態の評価は困難になる.American College of Radiology (ACR) や日本乳腺甲状腺超音波診断会議(JABTS)などでカテゴリー3 aあるいは3に判定される病変は経過観察が推奨されている.カテゴリー3の中に悪性疾患がある程度混入する可能性もあるが,その場合も早期に確定診断がつくことが理想的である.カテゴリー3ないし乳腺組織によるマスク部分を除く評価可能部分がカテゴリー3に相当する乳癌の特徴を解析して,診断が遅れた際の危険性を予測する
【方法】
2008年3月から12月の間に当科に治療希望して受診した腫瘤像形成性病変を呈する初発乳癌28人31結節を対象とした.超音波像(使用装置:GE Medical Systems社,LOGIQ700MR, リニア探触子9MHz)から良性類似癌(12人13結節)と典型悪性癌(17人18結節)に分類した(両群にまたがる症例があるため合計数は不一致).良性類似癌の超音波像の定義としてはACRのBI-RADSのカテゴリー3にほぼ準拠したものを用いた.受診時の自他覚所見,前医での吸引細胞診結果の有無,針生検病理像(組織型,ホルモンレセプタ,Grade),リンパ節転移状況,切除術の成功度をカルテにて確認,二群の差異を検討した.統計学的検討にはt-testとχ二乗検定を用いて,p値0.05以下を有意と判断した.
【結果】
いずれの結果も良性類似群と典型悪性群の順序で記載している.
年齢(平均±標準偏差):50.2±11.5,64.3±12.2歳,(p=0.003),
年齢(最小〜最大):25〜66,48〜88歳,
腫瘍最大径(平均±標準偏差):14.6±7.8,19.6±8.1 mm, (p=0.1),
腫瘍最大径(最小〜最大):4〜28,7〜38 mm,
自他覚腫瘤触知率:8/13,12/18,(p=0.8),
前医細胞診診断クラス4-5率:8/13,5/18,(p=0.06),
針生検病理(硬癌含有率):7/13,12/18,(p=0.57),
針生検病理(乳頭腺管癌含有率):7/13,5/18,(p=0.14)
針生検病理(充実腺管癌含有率):2/13,0/18,(p=0.8),
ER陽性率:10/13,13/18,(p=0.77),
PgR陽性率:8/13,13/18,(p=0.53),
病理Grade2-3率:9/13,14/18,(p=0.59),
リンパ節転移陽性率(臨床的診断または術前化学療法後の病理診断):1/13,1/18,(p=0.81),
円状切除成功率(典型悪性像群の11例が手術拒否のため分母が減少):9/13,5/7 (p=0.86).
【考察】
有意差はないが良性類似群は当院受診前に細胞診で癌疑い濃厚例が多い.診断の困難性を暗示するものと推察する.良性類似群の年齢が優位に若く,35歳未満症例が2例あった.線維腺腫の好発年齢と重複しており要注意である.一例は前医で線維腺腫疑いの経過観察中に増大したため細胞診で癌が疑われて当院に受診している.一般的に充実腺管癌が線維腺腫などの良性類似の形態,硬癌が典型的な悪性像になると考えられる.今回の検討では硬癌,ホルモンレセプタ陰性,病理高Grade,リンパ節転移陽性などの予後不良因子に両群間に有意差を認めない.むしろ良性類似群が若年傾向で予後不良となる可能性がある.乳腺超音波診断は慎重に行う必要性が示唆された.