岩男 華子¹, 本橋 淳子¹, 沼崎 仁美¹, 飯島 知子¹, 榎崎 茂¹, 文 由美², 神谷 英樹³

Hanako IWAO¹, Jyunko MOTOHASHI¹, Hitomi NUMAZAKI¹, Tomoko IIJIMA¹, shigeru EZAKI¹, Yumi MUN², Hideki KAMIYA³

¹つくばセントラル病院生理機能検査室, ²つくばセントラル病院外科, ³つくばセントラル病院健診センター

¹Department of Clinical Physiology, Tsukuba Central Hospital, ²Department of Surgery, Tsukuba Central Hospital, ³Center of Physical, Tsukuba Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
乳腺Matrix-producing　carcinoma（以下MPC）はMetaplastic carcinomaの一亜型に分類される稀な乳腺悪性腫瘍である．今回我々は超音波検査においてMPCの一例を経験したので報告する．
【症例】
37歳女性．左乳房腫瘤を自覚し，当院乳腺科を受診．左乳房AB領域に約3cmの腫瘤を触知した．
【検査所見】
超音波検査所見：左乳房AB領域に2.5×3.9×3.3cmの低エコー腫瘤を認めた．形状不整，境界明瞭粗造，内部エコー不均質で腫瘤中心部が高エコーレベル，後方エコー増強，腫瘤辺縁に比較的血流シグナル豊富．左腋窩に転移を疑う形状不整なリンパ節を認めた．超音波上組織型の推定は困難であった．
CT所見：腫瘤辺縁の増強効果は強いが内部の増強効果は弱く，粘液癌の可能性が考えられた．
穿刺吸引細胞診：Class V,ductal carcinoma（solid tubular carcinoma）と推定された．
生検：Invacive ductal carcinomaと診断された．免疫組織染色ではER,PgR,HER2陰性であった．増殖形態，高度な核異型，いわゆるトリプルネガティブを示すことから，basal-like breast cancer（basaloid canser）の可能性も考えられた．
　術前診断はT2N1M0,stageIIBで，術前化学療法後に左乳房温存術を施行した．
病理組織学的所見：肉眼的には境界不明瞭な腫瘍をみとめた．組織学的には，非常に異型の高度な細胞がびまん性に増殖し，腫瘍中心部は壊死となっていた．腫瘍間質は全体的に軟骨基質様であり，一部では豊富な軟骨基質中に軟骨細胞様の腫瘍細胞の増殖も見られた．以上よりMatrix-producing carcinomaと診断された．
【考察】
今回我々の経験したMPCの症例では，腫瘍細胞部分が超音波上低エコーレベルを呈し，軟骨基質部分が高エコーレベルを呈したと推測された．
【まとめ】
全乳癌の0.05％と非常に稀な疾患であるMPCの一例について報告した．