Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
腎・泌尿器:腎・泌尿器2

(S434)

小腎細胞癌の超音波像と病理組織像

Correlative Study Between Sonographic And Histopathologic Features In Small Renal Cell Carcinomas

水関 清

Kiyoshi MIZUSEKI

市立函館恵山病院内科

Department of Internal Medicine, Hakodate Municipal Esan Hospital

キーワード :

【緒言】
近年,各種画像診断法の普及により無症候性の腎腫瘤の発見される機会が増えている.今回筆者は,腎腫瘍の超音波診断の基礎となるBモード像と腫瘤の病理組織像とを対比検討したので報告する.
【対象と方法】
1986年9月からの10年間に,超音波スクリーニングによって発見された腎腫瘍のうち,切除術が施行されて腎細胞癌と確定診断され,摘出標本にて計測された腫瘍の最大径が30mm以下で,腫瘍組織内に広範な出血や壊死等の変化がなかった20例を対象に,以下の(I)と(II)の相関について検討した.
(I)超音波検査は同一検者が実施し,画像はBモード静止画像を用いて解析した.腫瘍の形状は,日超医の腎腫瘍浸潤度判定基準に準じて,輪郭の不整なし(O-0),軽度不整(O-1),高度不整 (O-2)の3段階に分類した.エコーパターンは,腫瘍実質が1種類のエコー輝度からなっているものを均一型,2種類以上の輝度からなっているものを不均一型とした.さらに,均一型に分類された腫瘍の内部エコーレベルは,腫瘍周囲腎実質および腎中心部エコー(CEC)と腫瘍実質のエコー輝度との比較で,周囲腎実質より低いもの(EL-0),周囲腎実質と同程度のもの(EL-1),周囲腎実質より高くCECより低いもの(EL-2),CECと同程度のもの(EL-3),CECより高いもの(EL-4)の5段階に分類した.
(II)病理組織学的検討は,超音波断層面に最も近く腫瘤の最大径が含まれる割面を対象に,腎癌取扱規約による分類,腫瘍細胞の異型度,細胞型,腫瘍内隔壁形成程度,腫瘍断面における実質成分と間質成分との比,腫瘍実質に占める組織学的構築の構成割合,の各項目とした.
【結果】
腫瘍の輪郭は,O-0が19例,O-1が1例.エコーパターンは,不均一型7例,均一型13例.均一型の内部エコーレベルは,EL-0およびEL-1が各3例,EL-2が7例.腫瘍細胞の異型度はG1のものが多く,腫瘍によってはG2がさまざまな割合で混じていたり,腫瘍径が小さくともG2主体のものがあるなど,多彩であった.また,細胞型は通常型が殆どで一定の傾向を認めなかった.一方,腫瘍組織内の病理組織学的な隔壁形成は,腫瘍径の増大にともなってその程度を増し,より顕著となる傾向を認め,それと同時にエコーレベルも上昇する傾向を認めた.また,腫瘍における実質間質比は腫瘍径の増大にともなって低下し,それと同時にエコーレベルも上昇する傾向を認めた.
【考察】
近年,Bモード画像の画質向上・アーチファクトの軽減・各種ドプラ画像の画質向上がもたらされた結果,腎腫瘍の超音波診断でも,基本となる腫瘤の形態診断に加えて腫瘤内部の血流情報診断が加味され,その診断精度は確実に高まってきた.また腎癌診療ガイドラインによれば,発見契機としての超音波スクリーニングは推奨グレードBとされ,早期発見の余命に与える有用性の検証が課題とされる.
一般診療に比べ制限の多い検診の場では,検者の得るBモード画像による丁寧なスクリーニングが基本となる.今回の検討から,小腎細胞癌では輪郭の不整はほとんどみられず,内部エコーも均一なものが2/3程度を占め,さらにその2/3は腫瘍内部エコーレベルが腎実質と同程度かそれ以下であること,腫瘍径の増大にともなって腫瘍のエコーレベルは上昇する傾向にあること,が明らかとなった.これらの知見は,周囲との分離が容易でない,エコーレベルが低目の腫瘤が相対的に多くなることを意味するもので,入念な検査を心がけて拾い上げることの大切さを示唆するものと考える.