Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
腎・泌尿器:腎・泌尿器1

(S433)

超音波が診断に有用であったびまん性の転移性陰茎腫瘍の一例

Ultrasonographic findings of diffuse penile metastasis: a case report

丸上 永晃1, 平井 都始子1, 山下 奈美子1, 吉田 美鈴1, 弓場 文麿1, 森本 由紀子1, 齋藤 弥穂1, 中島 祐子1, 大石 元1, 平尾 佳彦2

Nagaaki MARUGAMI1, Toshiko HIRAI1, Namiko YAMASHITA1, Misuzu YOSHIDA1, Humimaro YUMIBA1, Yukiko MORIMOTO1, Miho SAITO1, Yuko NAGAJJMA1, Hajime OHISHI1, Yoshihiko HIRAO2

1奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部, 2奈良県立医科大学泌尿器科

1Central Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University, 2Urology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
 転移性陰茎腫瘍は稀であり,その殆どが結節を形成した報告が多い.今回我々は肺癌治療の経過観察中,結節を形成することなくびまん性に陰茎転移した症例を経験したので画像を中心に報告する.
【症例】
 症例は70歳代の男性.2007年10月ごろより乾性咳嗽が出現.11月の検診で胸部異常陰影を指摘され近医受診.肺癌(T4.N2,M0 stage IIIb:扁平上皮癌)と診断され,放射線・化学療法が施行された.2008年4月に施行した経過観察のCTでは肝臓や脾臓に転移を認めた.5月頃には有痛性の持続勃起が出現したため,泌尿器科に紹介となった.
【画像所見】
 精査目的に施行した造影MRIでは,骨盤内に粗大な腫瘍性病変やリンパ節転移は認められなかった.更に陰茎内の信号は均一で明らかな結節性病変も指摘できなかった.更なる精査のために超音波が施行された.使用した超音波装置はGE社製LOGIQ7で10MHzのプローブを使用.Bモード像では,両側陰茎海面体は低〜高エコーと内部不均一で,点状〜網状の高エコー域が全域に広がっていた.カラードプラ像では,陰茎深動脈に拡張期の逆流を伴う拍動性血流を認め,FFT解析ではPI: 3.7, RI: 1.2 と拡張期血流の逆流と高いPI/RI値を示し,陰茎内の末梢血管抵抗が高い状態が示唆された.びまん性陰茎転移が疑われ陰茎生検を施行.陰茎海面体内に角化や壊死を伴う異型細胞が胞巣状に増生しており,転移性陰茎腫瘍と病理学的に最終診断された.
【考察】
 転移性陰茎腫瘍は稀な疾患で泌尿・生殖器腫瘍,直腸癌等からの転移が多いとされている.通常は結節を形成し超音波では低エコー結節として同定できる.本例の様に転移性陰茎腫瘍に有痛性の持続勃起を伴う頻度も37〜44%と少なくなく,臨床的にも悪性の持続勃起と考えられていた.しかし,本例ではMRIで明らかな結節が同定できず,超音波でびまん性の陰茎転移を疑うことができた.びまん性の陰茎転移の報告は少なく,特に超音波に関する報告は検索できなかった.Bモード像での内部不均一で全体に広がる点状から網状の高エコー域,PI/RIの高い血流波形が本病態を示唆する所見と考えられた.