Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
腎・泌尿器:腎・泌尿器1

(S432)

膀胱腫瘍に対する経直腸的超音波検査法〜3D超音波検査法を中心に〜

Transrectal three-dimensional ultrasonography for the diagnosis of bladder tumor

松尾 良一

Ryoichi MATSUO

長崎県済生会病院 泌尿器科

Urology, Nagasakiken saiseikai hospital

キーワード :

【目的】
 これまで泌尿器科領域の3D超音波検査法について報告し,前回の本学会学術集会においては,経直腸的Real-time 3D(4D)超音波検査装置を用いた膀胱〜前立腺観察の有用性について報告した.今回は,経腹壁的観察では浸潤度の診断が困難である膀胱腫瘍に対して,4D専用プローブを中心に各種の経直腸的プローブを用いて膀胱内の観察を行い,その有用性および問題点について検討した.
【方法】
 使用した超音波診断装置は日立メディコ社EUB-7500である.尿をある程度貯留させた状態の膀胱を,通常のBモード法にて2D超音波検査を行った後,症例に応じ4種類の経直腸的超音波プローブ(リニア/コンベックスバイプレーンプローブ(L/Cプローブ),コンベックス/コンベックスリアルタイムバイプレーンプローブ(C/Cプローブ),経膣用コンベックスプローブ,4Dコンベックスプローブ)を用いて,腫瘍の状態(表面の性状,膀胱内腔への腫瘍の発育,筋層への浸潤)について観察した.4Dプローブを用いた場合には,Real-time 3D(4D)観察も行った.
【結果】
1. プローブ挿入の可否について:C/Cプローブと4Dプロ−ブは,他のプローブと比較して径が太いために,肛門狭窄の症例では直腸内に挿入ができず観察不能であった.正常肛門例では,全例検査を施行できた.
2.プローブによる観察範囲について:L/Cプローブを用いた場合には,膀胱頚部および一部の症例で後壁の一部(三角部付近)を観察可能であったが,その他の部位に発生した腫瘍は観察できなかった.しかし,観察できた範囲内では腫瘍表面の性状・膀胱内腔への腫瘍の発育の状態・筋層浸潤が良好に描出できた.他のプローブでは,膀胱頂部だけではなく膀胱内腔ほぼ全体を観察することが可能であった.
3.膀胱内尿充満度について:L/Cプローブ以外のプローブでは,ほぼ膀胱全体の観察が可能であったが,膀胱内に尿が多量に充満している場合には膀胱頂部〜前壁の観察は困難であった.経腹壁的観察時と異なり,経直腸的観察の場合には膀胱内に尿が中等量充満している場合が最も観察に適していた.
4.3Dモードによる腫瘍の観察:4Dプローブを用いた場合には,surface modeにて腫瘍の膀胱内発育の状態をreal timeに観察可能であったが,空間分解能・時間分解能は十分なものではなかった.
【考察】
 経直腸的超音波検査法による膀胱腫瘍の観察は,成吉らをはじめとしてこれまでにも試みられてきた検査法であるが,一般的には普及していないようである.今回,Real time 3D超音波検査法を用いることにより,腫瘍の膀胱内発育の状態を疑似的に表示するVirtual cystoscopyとして,膀胱腫瘍の総合的な観察を試みた.問題点としては,1)プローブ径の太さと,2)空間分解能と時間分解能のバランス向上であると考えられる.
【結論】
 経直腸的超音波検査法は,プローブの種類を適切に選択すれば膀胱腫瘍の性状を詳細に観察することができる有用な検査法である.さらに,経直腸的3D超音波検査法は,今後のさらなる時間・空間分解能の向上を期待しVirtual cystoscopyとしての可能性を秘めた検査法であると考えられる.